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第5話 添い寝
え?
目が点になる。
早いフラグ回収だったな。
「俺の睡眠障害、凛君に膝枕してもらった時だけ何故か熟睡出来るんだよね」
通いの時、膝枕でよく「二日ぶりに熟睡した~」と言っていたのを思い出す。
「バイト代も出すから」
「これ以上バイト代は受け取れません!」
(引っ越し費用も全額負担してもらったし!)
鬼気迫る迫力に、金銭感覚の脊髄反射で答えてしまった。
「だめかぁ…」
しょんぼりと肩をおとすイケメン。
しまった、と無言になる空間。
虚ろな目、ちびちびと進める箸。
只ならぬこの世の終わり感。
何故だろう、一気に老け込んだように見えるのは気の所為か?
睡眠は生活の質に直結する深刻な問題だ。
(添い寝、変な意味はないのかな)
ぐぬぬ、と俺の知ってる添い寝の引き出しを洗い出す。
「膝枕とかではなく、添い寝、だけですか?」
「添い寝だけ、だよ」
大事な事だ。一応確認しておこう。
俺は手に汗を握り、重くなる口を開いた。
「その、恋人の趣向とかは」
「少し前に彼女が居たっきり」
そっか。「ノーマル」って事だよな?
途端に心が軽くなる。
ただ一緒に寝るだけ。
俺みたいなガキに興味を持つはずもなし、よし。
「とりあえず、1回お試しでもいいですか?」
「うん!」
途端に綻び、満ちる笑顔。
「よかったー、嫌われたらどうしようかと」
「別にそういうのじゃないです」多分。
「ありがとう、寝るのが楽しみだなあ」
打って変わって、るんるんと鼻歌でも混じりそうな雰囲気。
少しの善意で了承したものの、俺は慣れない要求に緊張した。
――深夜23時、寝室にて。
雰囲気漂う、仄かな薄明り。
キングサイズのベッドを前に佇む俺と、ベッドに入ってぽんぽん、と笑顔で隣へ誘導する高見さん。
前に洗濯時の会話で、寝る時は「パンイチ」と言っていたが、今日はシャツを着ていた。
男とはいえ、配慮してくれたのだろう。
「お邪魔します」
ごそごそと侵入する。
幸いにも広過ぎるベッドなので、俺は端っこの方でこじんまりと収まった。
「おやすみ」
消される間接照明、静まる気配。
…本当に隣で寝るだけなんだな。
(広いし、めちゃ寝心地いい)
これなら寝返りで高見さんを蹴ったりしなくて済む。
それに、いい匂いだ。
恐らく睡眠の質を上げる為のハーブだろう。
俺はこれまで世話になったせんべい布団に別れを告げ、深い眠りに就いた。
――翌朝。
ブーッ、ブーッ。
スマホの静かなアラームで目を覚ます。
今までになく最高の寝心地だった。
しかし、だ。
何故俺はベッドの端で、抱き枕よろしく高見さんにバックハグされているんだろう。
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