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赤いバラ砕けて 1
学校帰り、ふらりと寄ったコンビニにはバレンタインの特設コーナーができていて、もうそんな時期かと思う。
買うつもりはなかったのだが、何気なく向けた視線の先に、猫柄の紙箱があった。思わず商品を手に取ると、中には猫の形をしたチョコレートクッキーが入っているようだった。値段は五枚入りで六百円。少し高いと思ったけど、買えない額ではない。
――先生、甘いもの好きかな。
そんな考えが脳裏をよぎった。
日頃のお礼だ。感謝の気持ち。他意はない。絶対に。本当に渡すかどうかはさておき、買っておいてもいいか。先生じゃなくて、母さんに渡してもいいし。
誰にしているのか分からない言い訳が、頭の中をくるくる回る。
俺は平静を装って、店内をうろうろし始めた。すぐにレジへ向かうと、これを買いに来た人だと思われそうで恥ずかしかった。
店内を二周したあと、スポーツドリンクと一緒にレジに持っていった。バレンタインデーは来週の金曜日。ちょうど先生が家に来る日だ。
――人に渡さないで、自分で食べてもいいし。
なおも言い訳を続ける頭を抱えながら、俺は会計を済ませた。
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