133 / 135

(ホテル)名前を呼んで 8

「けんと、さんっ、や……ぁ、い、い」  僕が腰を振るたびに悠里がかわいい声で啼くから、止まらなくなる。 「あ、あ……っ。けん、と、さぁ、……んんっ!」 「あっ……、うっ。ゆう、り……好きぃっ!」  ――やばい。きもちよすぎる。ぼくの、ゆうり。かわいい、ゆうり。イけ。イけっ。もっとぼくに、おぼれて。もっと、もっと。もっと!  脳が溶ける。難しいことを何も考えられなくなる。 「悠里、すき」 「きもちっ、んぁっ! ぃやッ、こわい、へんになる……っ!」 「気持ちいいね。こわくないよ」  ――もっと、なけ!  屹立をしごきあげれば、より一層大きな声で啼いてくれる。 「あっ……! やっ、なんかくる、きちゃ……ああっ!」 「かわいい」 「あん! けんとっ、さ、んんんっ! イっちゃう、からッ! もう、やめ……」 「やめない。……イきたいんでしょ? イって」 「あっ、あッ、い……く……、っああぁーっ!」  僕の言葉に促されるように、悠里が体をビクビクと震わせて、白濁を吐き出した。僕の精力を搾りつくさんばかりに、悠里の中が締まった。悠里の目から涙が滑り落ちるのが見えた。意識が飛びそうになったところを、なんとかこらえる。  余韻に浸るようにけいれんしている悠里の体を、ぎゅっと抱きしめた。悠里の手足から力が抜け、僕の両手に、ずしりとした重さがのしかかった。その重みで、快楽でぼやけていた僕の頭が、はっきりしてくる。  悠里は気を失ってしまったのだろう。慎重にベッドの上に寝かせた。 「ごめんなさい。無理させてしまいましたね」  悠里の顔にかかっている髪の毛を払ってやってから、体を引き抜くと、その刺激で決壊した。スキンの中が、飛び出した欲望でいっぱいになる。  いまだかつて味わったことのない快感が弾けて、腰が砕けた。  たくさん名前を呼んだし、呼ばれた。そうできなかった今までの日々を埋めるように悠里を求め、悠里はそんな僕にこたえてくれた。びりびりと脳の一部がまだ痺れている。 「ありがとう。大好きです」  肩で息をしながら、悠里の左手を持ち上げて、薬指の付け根にそっと口づけをする。泣いて、啼いて、僕の情欲を懸命に受け止めてくれた、かわいくて、大切な、僕の宝物。  悠里の中で達することはできなかったが、僕が悠里を絶頂させたのだという喜びで、心は満たされていた。  コンドームの処理を終えてから、悠里の全身を濡らしたタオルで清め、上からパジャマと布団をかける。 「おやすみ、悠里」  悠里の布団が規則正しく上下しているのを見とどけ、僕はバスルームに向かった。熱めのシャワーを浴びながら、静かな幸せに身を委ねた。

ともだちにシェアしよう!