8 / 51

白昼夢 7

よく分からない・・・ 翔さんも潤くんも・・・ 何を言ってるの? 僕のこと? それとも梨花のこと? 「もう・・やめて・・・何で・・・?  何で・・こんなことに・・・・・」 口から勝手にこぼれる言葉を止められなかった。 「翔さんも、潤くんも・・・  僕の気持ちなんて考えもしないで・・・  僕抜きで勝手に話を進め・・・て・・・・  僕には、何のことだか分かんないまま・・・・・  もう・・嫌・・だ・・・僕は・・・僕・・・は・・・・・・!」 それ以上、何を言って良いのか分からなくなってしまった僕を 翔さんも潤くんもただ黙って見ている。 二人の視線に耐えられなくなった僕は稽古場から逃げ出した。 外の空気を吸いたかった。 あのまま、あの場にいれば息が詰まりそうだった。 もう、今日はこのままどこかへ行ってしまいたい。 でも今の僕には・・・それすら許されない。 暫くの間、外気に触れるだけが精一杯の抵抗。 「そろそろ帰るか・・・・・」 稽古場に戻ったらもう稽古は始まっていた。 演出家が無言で 『早く所定の場所につけ』と僕に目で伝えてくる。 僕は軽く会釈をして席に着いた。 その日は夜遅くまで稽古が続いた。 あれから翔さんと潤くんの間で何があったのかは 怖くて聞けなかった。 「南、行くぞ!」 潤くんが今朝 僕が用意してきたバックを持ち僕を呼ぶ。 最後まで稽古を見学していた 翔さんと梨花の視線が僕に突き刺さる。 「・・で・・も・・・・・」 「でも?  今更・・・何、言ってんの?  ほら、行くぞ!」 「・・う・・ん・・・・」 潤くんは僕の腕を掴み強引に稽古場から出ると 道端に止まっていたタクシーに合図をし 無言のまま僕を車の中へ押し込むと そのまま自分の部屋まで連れて行った。 タクシーから降りて、エレベータに乗って 部屋に着いても潤くんは僕の腕を掴んだまま離してくれない。 「・・潤・・くん・・腕が・・痛・・い・・・」 「・・・・・・」 潤くんが突然、僕の唇を奪う。 それは・・・触れ合うだけのキスでは無くて。 ・・・息が出来ない・・・ 僕は潤くんの胸を突き飛ばす。 「・・いや・・だ・・放・・・せっ!」 けど・・・ 非力な僕では潤くんの力には勝てなくて 潤くんの唇がまた僕の唇に重なる。 ・・・今度は舌を絡めてきて・・・ 「やっ・・な・・に・・・?」 無我夢中で口腔を弄ぶ潤くんの舌から逃れたのに 僕は強引に潤くんのベットへ押し倒されてしまう。 「嫌だ・・放せ・・よ・・っ!!」 僕の言葉を無視して 潤くんは押し倒した僕の肩をガッツリとホールドする。 僕は必死に抵抗を試みるけど・・・ やっぱり、潤くんの力には勝てなくて 潤くんは僕の抵抗も言葉も感情も・・・ 全部無視して僕の服を剥がしていく。 潤くんの無理矢理な行為に シャツのボタンが一つ弾けた。 「嫌だ!・・・放・・せ・・っ・・・・!」 潤くんは無言のまま 僕のカラダに赤い跡を付けていく。 怖い・・・ 潤くんが・・・・ 僕が・・・・ 何もかもが・・・・ 纏いつくようなザラついた潤くんの舌が 気持ち悪い・・・ それが首筋を通り胸へ・・・ そして僕の・・・ あまりの気持ち悪さに吐きそうになった瞬間 持ち上げられた腰から背中にかけて衝撃が走ると 激しい痛みに僕のカラダと心は二つに引き裂かれた。 「・・い・・た・・・っ・・・・  いや・・・・ん・・・・っ!」 潤くんが無理矢理、僕のカラダの奥へと進んでくる。 「んっ!・・あ・・・い・・や・・・・っ・・・・」 それから・・・ 僕がどんなに泣き喚こうがそれを無視して 何度も、何度も僕の中に刻み込むよう 潤くんは僕を突き動かし 僕の中に白濁を吐き出しても まだ、足りないと・・・ 潤くんは僕のカラダを一晩中貪った。 ・・・僕の意識が無くなるまで・・・ 目覚めると、隣に潤くんの姿がなかった。 ヌルりとした感触を指先に感じ視線をそちらに向ければ シーツが僕の血で赤く染 まっていた。 ・・・それは引き裂かれた僕の心みたいで・・・ 僕は声も出せないまま泣いていると 潤くんがタオルを手に部屋へ戻ってきた。 僕のカラダを綺麗にする為に 取りに行ってくれていたみたい・・・。 「そのままじゃ・・・気持ち悪いだろ?  体、拭こうか・・・」 そう言って僕のカラダを起こす。 「痛・・・っ!」 僕はカラダに激しい痛みを感じて顔を歪めた。 「南、大丈夫か?  ・・・ごめん・・・・・」 潤くんは先程までとは違って優しく僕に触れる。 僕の目からまた・・・涙が溢れた。 「・・何で・・・こんなこと・・・・」 「・・・・・・・・」 「どう・・して・・・・・」 「お前が悪いんだ!」 「・・・・・・・」 「お前が、俺を狂わす・・・・」 「な・・に・・言って・・ん・・の・・・・?」 「お前が・・・・」 「潤・・く・・ん?」 「お前を忘れる為に梨花を抱いた。  でも・・・お前を忘れる事なんて出来なかった・・・・  去年一緒に暮らした時から・・・・  俺は南が欲しかった。  俺のものにしたかった・・・・なのに、お前は・・・・・」 「潤く・・ん・・・・」 「もう、放さない・・お前は俺だけのものだ・・・・・」 潤くんに抱きしめられながら 潤くんの想いを伝えられて僕は思った。 ・・・逃げられない・・・ 潤くんの気持ちにやっと気付いた僕・・・ こんなにも僕は潤くんを苦しめていたなんて・・・ 「潤くん・・傍にいる・・か・・ら・・・・」 「・・・・・」 「もう、どこにも行かないか・・ら・・・・」 「・・み・・なみ・・・・?」 「好きにして・・いいか・・ら・・・・・」 「南・・・」 僕の言葉を聞いて安心したのか 潤くんが優しく抱きしめてくる。 ・・・僕は潤くんの気持ちに応えたいと思った・・・ こんなにも僕を想ってくれている潤くんを このまま放っておくなんて出来ない。 梨花にゴメンって思う気持ちと 翔さんへのまだ形を成してない気持ちに 胸の奥に痛みを感じながらも・・・ この時、僕は・・・ 潤くんの傍に居ることを選んだ。

ともだちにシェアしよう!