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願い 3

ポケットの中で鳴る着信音。 スマホから聞こえて来た累の声に何だかホッとした。 最近、潤ちゃんの事ばっかりで苦しかったから・・・ 「もしもし・・・」 「あ、梨花さんですか?」 「累?何かあった?」 「あのちょっと・・・今から良いですか?」 「う・・ん・・・良いけど・・・」 「今、何処です?」 「外」 「外ってこんな夜遅くに?」 「うん、そう・・・行くとこなくてプチホームレスやってるとこ・・・」 「え?」 驚いた声の累が可笑しい・・・ 「うそうそ・・・」 「そうですよね・・・ビックリしました・・・」 「で、話?今から累のとこ行けば良いの?」 「良いですか?」 「良いよ」 「じゃ、待ってます」 良かった・・・ 今日はこれで帰らなくて済む・・・ 今は潤ちゃんとは一緒にいたくないから・・・・ 累は・・・ 今回の役は翔さんの恋敵。 南のフィアンセの役なのにすれ違い 翔さんに南を奪われてしまう役柄だった。 初めての大役に相手役もいると言うことも重なって 緊張からか南の演じる女性を どう想って良いかわからなくなってしまって悩んでいるみたい。 累の部屋に着いてから、ずっと南の話ばかりだ。 ・・・また、ここでも南か・・・ どうして南なの・・・? 俺だってこう見えても娘役のひとりなんだけど・・・・ あ~、もう・・・! でも・・・ 南には俺に無いものがいっぱいあって勝てないんだよね・・・ 俺は 娘役でも 恋でも 南に勝てない・・・ 辛いよ・・・ 「あの・・・聞いてます?」 「あ、ごめん・・・聞いてるよ・・・」 「だから、俺わからないんですよね・・・どうして良いか・・・」 その累からの言葉に・・・ 僕の中で嫌な僕が顔を覗かせる。 「じゃ、やってみる?」 「え?何を・・・?」 「だからこういう事・・・」 そう言って累にキスをする。 驚いて目を見開いて僕を見る累・・・ もう、どうなってもいいや・・・ 累の手を僕の身体に導く・・・ 累は何が起こってるのか理解出来ないみたい。 「累・・・俺のこと抱いてみる?  そしたらわかるかも・・・」 「ちょ、ちょっと待って・・・」 「累は僕が嫌い?」 「あの、その、・・・えっ・・・」 「嫌いじゃないなら抱いてよ・・・  男同士なんだから減るもんじゃないしさ・・・」 「梨花さん・・・?」 「抱いて欲しいんだ・・・」 ・・・その後の事はあんまり憶えてない・・・ ただ・・・ 朝になって 「すみません」と謝る累の顔を見て 『ああ、累に抱かれたんだ・・・』と・・・ もうそれからは何もかもがどうでもよくなって・・・ 潤ちゃんに抱かれたり 累に抱かれたり・・・ それでなんとか心のバランスを保っていた・・・

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