・・・知らなかった・・・ 累はてっきり僕を・・・ ごめん・・・ 本当にごめん・・・ 好きな相手ってもしかして・・・ ああ、そうだった。 累の視線の先にいたのは・・・ たぶん、そう・・・ ごめん・・・ 本当に・・・ 「潤ちゃん・・・ 　僕、もう潤ちゃんも累も忘れる・・・」 「・・・・・」 「僕は皆を振り回してるだけだよね・・・？ 　潤ちゃんのことも、累のことも・・・」 「・・・・・」 「僕は待ってるって言ったのに、潤ちゃんのこと待てなかった・・・ 　ううん、待てるはずなかったんだ最初から・・・ 　僕はそんなに強くないし、独りなんて耐えられない・・・ 　潤ちゃん・・・ 　僕は潤ちゃんが好きだと思ってた・・・ずっと・・・ 　でも、本当は南から潤ちゃんを奪いたかっただけなのかもしれない。 　自分でもよく分からないんだ・・・ 　潤ちゃん・・・僕は・・・」 「もういい・・・もういいから・・・」 「潤ちゃん・・・」 泣く僕を優しく抱きしめてくれる潤ちゃん。 でも・・・ 僕はこの胸の中にいてはいけない様な気がして。 出来れば・・・ もっと違う形で出会いたかったな・・・ もっと違う愛し方が出来れば良かったな・・・ どうして人はすれ違うんだろう？ 心と体は一つにならないんだろう？ ・・・悲しいよ・・・ 潤ちゃん・・・ 僕はどうして潤ちゃんを好きになったんだろう？ もう、今となっては答えすら見つからないよ・・・ 潤ちゃん・・・ 潤ちゃんの胸から逃れ様としてもがく僕を潤ちゃんが強く抱きしめる。 潤ちゃんの心臓の音が僕の耳に聞こえるぐらい強く僕を抱きしめる。 「好きだ・・・」 「え・・・？」 「好きだから・・・何処にも行くな・・・」 ・・・潤ちゃんの言葉が僕の耳に響いた・・・ 「潤ちゃん・・・ 　僕、もう潤ちゃんも累も忘れる・・・」 梨花の口から意外な言葉がもれた。 どういう事なんだ？ じゃあ、なんで泣いてる？ そんなに辛いなら・・・ 俺の胸で泣けよ！ 梨花、一人で泣くな。 俺は今まで梨花の何を見てきたんだ？ いつも春風のように優しく俺の周りにいてくれた梨花。 『潤ちゃん！ 　ねえ、潤ちゃん』 『今度は僕が・・・潤ちゃんの相手役やりたかったなぁ』 『潤ちゃん、今度は僕が潤ちゃんの恋人役だって！』 潤ちゃん・・・ 潤ちゃん・・・ 潤ちゃん・・・ 梨花が俺を呼ぶ時、何故か心が安らいだ。 「本当は南から潤ちゃんを奪いたかっただけなのかもしれない・・・」 そんな訳ないだろ？ そんな事、俺は認めない。 「もういい・・・もういいから・・・」 「潤ちゃん・・・」 ・・・すまない・・・ お前を手放す事なんて出来ない。 今更で・・・ごめんな、梨花。 泣きながら震えている梨花を抱きしめる。 ・・・分かっていた筈なのに・・・ 梨花はそんなに強くないって。 強くないから何時も笑って自分を誤魔化してるんだって。 そんな梨花をこんなになるまで傷つけてしまった。 抱きしめた梨花が俺の腕の中から逃げようとする。 もう離さない・・・ ・・・離したくない。 「好きだ・・・・」 梨花が俺を見上げる。 「え・・・？」 胸の鼓動が早まる。 言ってしまえ！ 今、言わなかったら絶対に後悔する。 「好きだから・・・何処へも行くな・・・」 俺を見つめていた梨花の唇からでた言葉は・・・ 「う・・そ・・・だ・・・」 俺の告白を否定する言葉だった。 俺はもう一度、梨花に言う。 胸の中にある願いを込めて。 「好きだ・・・だから・・・ 　何処へも行くな・・・俺の傍にいてくれ」 俺の頬を温かな涙が流れていく。 「潤ちゃん・・・泣かないで・・・」 その涙を梨花の指が拭ってくれる。 その優しさに涙が止まらない。 「梨花・・・好きだ・・・ 　やっと気づいた・・・ 　俺はお前がいないと駄目なんだ・・・ 　だから・・・だから・・・何処へも行かないでくれ・・・」 涙でぼやけて見えない。 梨花がどんな顔をしてるのか・・・ だが・・・ 梨花が頷いてくれた事だけは分った。 俺は梨花をきつく抱きしめ 震えている梨花の唇を俺の唇で包みこんだ。 ・・・俺はやっと梨花をこの腕の中に取り戻せた・・・ 俺の天使が・・・ 俺の願いを聞き入れてくれた。 梨花・・・好きだ。 これからはお前だけを見つめて行くから。