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告白 1

「僕、累さんが好きです」 「ありがとう・・・  俺もれいはこの頃よく頑張ってると思ってるよ。  この調子で次回公演も頑張って・・・な!」 「あの・・・そうじゃなくて・・・・」 「ん?」 「僕は累さんが好きなんですってば!!」 「?」 「だから!!」 だんだんと大きくなる声に 思わずれいの口を俺の手で塞いで楽屋から連れ出した。 俺に引きずられる様に連れ出された れいの顔が可笑しいやら可愛いやら・・・ 千秋楽で片付けの終わった ガランとした舞台袖まで引きずって来られたれいは少し怒って 「もう!何するんですか?  痛いじゃないですか!!」 「ごめんな・・・  だけどあんなところで大きな声出したら皆に聞こえるだろ!」 「でも、累さんがちゃんと聞いてくれないから悪いんです!!」 何だ?こいつ・・・ 逆切れか・・・・? 「ちゃんと聞いてるだろ!  だからありがとって・・・」 「ほら、やっぱ聞いてない!」 「何が言いたいの?  お前・・・」 「だから、僕は累さんが好きなんですってば!!」 「だから、ありがとって・・・」 突然、れいの顔が目の前に来た!と思ったら・・・ 唇にキスをされた。 「こう言う意味の好きですってば!」 「・・・・・」 そのまま暫く俺は放心状態。 ボクシングで言えばKO。 れいの完全勝利ってヤツ? 「累さん?  累さんってば・・・大丈夫ですか?」 「ははは・・・」 俺は情けないけど笑いながら後ずさり・・・ 近寄ってくるれいの顔がまともに見れない。 「累さん・・・返事下さい!」 「へ・・・っ?!」 コイツ・・・ こんなにはっきりした奴だったっけ?? 俺の中のコイツのイメージだと晩熟というか・・・ ヘタレ? ああ、そう。 そんな感じだったのに・・・ ヤバイ! 俺、今・・・頭の中真っ白・・・ 「また、今度・・・な・・・・・」 なんだか訳の分からない返事をして 俺は楽屋へと逃げた・・・・ 僕は入団してからずっと・・・ 舞台の袖で累さんを見つめていた。 「れい?」 「・・・・・」 「れい!」 振り返ると同期の湊が僕を心配そうに見ている。 「何?」 「何、ボ~~~っとしてんの?」 「べ、別にボ~っとなんてしてないよ」 僕は累さんのカッコ良さに我を忘れて見入っていた。 ズキン・・・ ズキン・・・ 僕は累さんの事が・・・ 「大丈夫か?」 「うん、何でもない」 湊の心配そうな視線を感じながら僕は楽屋へ急ぐ。 鏡の前に座るとそこには累さんに恋をした瞳の 僕の姿が映っていた。 僕は・・・ 累さんが好きなんだ。 ズキン・・・ ズキン・・・ 胸が痛い・・・ 化粧を直していると誰かが入って来た。 「あれ、れい!どうした?」 「る・・・累さん!?」 「お前、声うわずってるぞ!」 「・・・・・・・」 「れい?」 心配そうに僕の顔を覗き込む累さんの手が肩にのると 僕は飛び退いてしまって ガランと嫌な音をさせ椅子が倒れた。 「れい・・・?」 「すみません・・・ぼ、僕・・・化粧を直しに来たんです」 「そっか」 累さんは倒れた椅子を起こすと 僕に笑いかけ煙草を取り出し 「内緒だからな!誰にも言うなよ!」 そう言って煙草に火をつけた。 椅子に座り足を組む累さんは・・・ カッコいい~~~~! でも・・・ 舞台の途中で煙草を吸うなんて・・・ らしくないな・・・何かあったの? 薫さんのさよなら公演中 僕は累さんに対しての想いが強くなってるのを肌で感じながら 舞台に立つ彼から目が離せなくなっていった。 千秋楽・・・ 僕は僕の中のある限りの勇気をかき集めて 累さんに思い切って告白する。 「僕、累さんが好きです」 「ありがとう・・・・・・・」 え?ありがとうって・・・ 違うでしょう~が!! 僕の一世一代の告白なのに・・・ どうして・・・ありがとう、最近頑張ってるよなになるの? 「あの・・・そうじゃなくて・・・」 「ん?」 「僕は累さんが好きなんですってば!!」 「?」 これでもわかんないの? 「だから!!」 ついつい声が大きくなってしまって 僕は累さんに口を塞がれ楽屋から引きずり出された。 けど・・・ その時、累さんは優しい顔で笑っていた。 だけどさ・・・ 僕の言った事を聞いちゃいない累さんにちょっとムカついて・・・ 何で『ありがとう』しかくれないの? 全然、聞いてないじゃん! 僕はもう殆ど残っていない勇気を更にかき集めて最終手段にでる。 だって・・・ 分かってくんないんだからっ! だから・・・ 累さんにキス・・・ キスを・・・した。 僕って大胆! あれ? 累さんが・・・ 放心状態になってる・・・だ、大丈夫? それに・・・ 笑ってるよ・・・あっ、何で後退さるの? に、逃げる気だ~~~! 僕は近寄ってハッキリと彼に言い放った。 「累さん・・・返事下さい!」 あれ・・・累さんが変だよ? 「また、今度な・・・な・・・」 は? 今度なって・・・どういう事? 僕の一世一代の告白にそんな返事はないでしょ! 累さん!! あ~あ、逃げられちゃったよ・・・。 その後の打ち上げの最中 累さんがチラチラと僕を見る。 僕はそんな累さんに笑いかけるが・・・ 無視ですか? そう、きましたか? でも、負けないから・・・! 返事を貰うまで僕、頑張りますからっ!! そう心に誓って 翔さんと智さんのお披露目公演の稽古に挑んだのに・・・ 累さんがフィアンセの南さんへ想いを 恋敵の翔さんに語ってる・・・ なんか、胸が痛い・・・ 「れい・・・お前、なんて顔して翔さんをみてんの?」 「え?翔さん?」 「違うの?」 「湊、違うよ!」 「じゃ、まさか・・・る、累さん?」 「うん・・・」 「れい・・・本気なのか?」 「うん、告白しちゃった」 「はぁ??」 「湊ってば!」 「ごめん・・・で?どうだった?」 「逃げられた」 「に、逃げたの?累さんが?」 「うん・・・  だからまだ・・・返事貰えてない」 湊が僕の肩を抱き小声で耳打ちする。 「あのな・・・累さんはやめといた方がいいかも・・・」 「なんで?」 「別に深い意味はないけど・・・」 この湊の言葉の意味が 後になって嫌と言うほど思い知らされる日が来るのを この時はまだ知らなかった。

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