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告白 4

昨夜はほとんど眠れなかった。 梨花さんの顔を眺めながら昨夜の事を思い出していた時 梨花さんが目を覚ました。 ・・・俺は自分でも分かるぐらいテレて顔が真っ赤になっていく・・・ 「おはよ・・・」 「お・・は・・よう・・・ございます・・・」 しどろもどろで何とか答える俺。 それを見て笑う梨花さん・・・ 「累・・・どうしたの?」 「あの・・・いや・・・」 「累・・・顔、真っ赤だよ!」 「あはは・・・」 「少しは分かった?  今度の役の気持ち?」 「あの・・・・はい・・・まあ・・・・・」 「累・・・また来て良いかな?」 「・・・・・・」 「累・・・」 縋る様な瞳で言う梨花さん・・・ その姿に俺は「NO」と言えない・・・ 「はい・・・」 「ありがとう、累!」 梨花さんに潤さんと何かあったのか訊きたい。 『何かあったんですか・・・?』 でも・・・ 梨花さんの笑顔の中にある悲しげな瞳を見たら訊けない・・・ 俺は喉まで出てきた言葉を飲み込んだ。 それから梨花さんは稽古の帰りに俺のところへ来ては・・・ 躰を重ねた。 『恋愛』ではない。 ただ躰だけの関係。 ・・・れいの事が俺に重くのしかかる・・・ けど・・・ 今の梨花さんを突き放す事が出来なかった。 俺と肌を合わせる事で 危ういバランスを保っている様に見えるから・・・ 『ごめんな、れい・・・・』 ・・・心の中で呟く・・・ 稽古も終盤になったある日 夕方から雨が降ってきた。 ・・・朝はあんなに良い天気だったのに・・・ 梨花さんと稽古場からの帰りに 近くのコンビニに寄って今晩の夜食と傘を買う。 そこにれいの姿が・・・・ 「れ、れい!」 「お疲れさまです」 「あぁ、おつかれ」 俺はそれ以上・・・ れいに言葉をかけてやれなかった。 後から出てきた梨花さんと一つの傘に入り帰る。 どんな想いで俺と梨花さんの姿を れいは見てるのだろう・・・・ 俺はれいの気持ちを考えると振り返ることが出来なかった。 『ごめんな・・・』 ・・・何度も心の中で呟く・・・ 『ごめん、れい・・・』 翌日・・・ あんな姿を見たのにれいは笑顔で俺に挨拶をする。 「おはようございます!」 「おはよう・・・」 だけど・・・ 泣きはらしたんだろう目が赤い・・・ なのに俺はその時、梨花さんと・・・ そう考えると稽古に身が入らず 演出家から駄目出しの連続。 稽古場の隅で項垂れていたら梨花さんが傍に来た。 遠くでれいの視線を感じる。 俺もれいを見た。 『れい・・・ごめん・・・』 心の中でどんなに謝っても もう・・・限界に近い。 ・・・何とかしないと・・・ だけど・・・ その夜も梨花さんは俺を求めて肌を重ねてきたが 俺はこれが最後だと決めその要求に応えたのに・・・ 梨花さんの様子が何時になくおかしい・・・ 潤さんと何かあった? それとも俺の気持ちが伝わった・・・? 「梨花さん・・・・?」 「ごめん、続きしよ・・・」 「でも・・・  あの辛いんじゃないんですか・・・その・・・」 「潤ちゃんのこ・・と・・・?」 「はい・・・」 「累は・・・こういう関係・・・嫌なの?」 「嫌とかそんなんじゃないです。  ただ・・・」 「ただ?」 「俺は・・・」 「・・・何・・・?」 「いや、良いです・・・」 「へんな累・・・」 俺は結局、何も言えず 梨花さんの感じる場所を何度も突いた。 肌を重ねる度に梨花さんの躰を知り尽くしてて・・・ 何度も抱き合って梨花さんを近くに感じていれば 自然と分かるものなのかもしれない。 けれど・・・ それが俺には悲しかった。 愛情も無いのに抱けてしまう男としての俺が・・・ 汚く思えて、苦しかった・・・ そんな事を考えていたら・・・ 梨花さんが目を開けたまま何も話さなくなっていた。 ・・・放心状態?!・・・ 俺は慌てて声をかける。 「梨花さん!」 「・・・大丈・・夫・・・」 「良かった・・・心配しました、マジに・・・」 「・・・それだけ・・・  累が上手くなったってことじゃん・・・」 こんな時なのに・・・ 梨花さんの言葉に真っ赤になる俺。 「そろそろ帰る・・・」 「え?大丈夫なんですか・・・  そんな躰で・・・」 「大丈夫・・・」 「でも・・・」 「何?もうする事したじゃん・・・・」 「梨花さん」 「累・・・もしかして・・・本気になってる?」 「・・・・・」 「ごめん、帰るから・・・」 「梨花さん、俺・・・」 「ごめん、聞きたくない!!」 服を手早く着こみ帰ろうとする梨花さん・・・ でも、今夜話さなくては・・・! きちんと話をしなければ・・・!! 俺は逃げるように帰ろうとする 梨花さんを後ろから抱きしめた。 その腕を振り解いて梨花さんが部屋から出て行く。 ・・・追いかけないと・・・ そう思うのに身体が動かない。 俺は一体どうしたいんだ・・・? れいの顔と梨花さんの顔が交互に浮かんでは消えた。

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