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告白 6

俺は梨花さんが帰ってしまってから 暫くそのまま立ち尽くしていた。 けど・・・ れいのあの笑顔にきちんと答えてやりたい。 先輩として・・・ 男として・・・ 俺はスマホに手を伸ばし、梨花さんの番号にかける。 1コール、2コール、3・・・・・ なかなか繋がらない。 「れい・・・」 そう呟いて俺はスマホを切った。 「れい・・・・」 もう一度呟く・・・ その時、スマホが鳴った。 梨花さんからだ。 「累!助けて!!」 それだけ言うと切れた。 何があったんだ? 多分、潤さんのとこに帰ったはず・・・ 俺は急いで梨花さんのもとへ向かった。 俺はタクシーを捕まえ乗り込むと潤さんのマンションまで急ぎ そこからは潤さんの部屋の前まで走った。 だが・・・ チャイムを鳴らしても応答が無い。 ドアノブに触れるとが開いているみたいだ。 少し躊躇ったけれどドアを開け中へ入ると 廊下越しのドアから潤さんと梨花さんの姿が見えて・・・ 俺はドアを開き潤さんに頭を下げ梨花さんの傍に行く。 「梨花さん、大丈夫ですか?」 「どうして・・・どうして・・・言ってくれなかったの?」 「何をです?」 「累には・・・好きな人がいるんだろ?」 「・・・・・・・」 ・・・俺は答えられなかった・・・ その俺を気遣う様に潤さんが言う。 「梨花、累を解放してやれ」 「・・・いやだ・・・いや・・・・」 そう言って俺にしがみつく梨花さんを 潤さんが離そうとするが・・・ 梨花さんの指が俺の首に食い込む。 「梨花、累を傷つける気か!」 「あっ・・・」 俺の首から血が滲んできた。 それを見て梨花さんが 「ごめん・・・ごめんね、累」 「大丈夫ですから」 「・・・ごめん、ごめんね・・・累・・・」 何度も何度も謝る。 潤さんがガーゼを持ってきてくれ 首の傷から滲む血を拭いてくれた。 ・・・言わなければ・・・ ・・・今、伝えなければ・・・ 「潤さん・・・・・  梨花さんを愛してあげて下さい。  俺では無理なんです」 「・・・・・」 「俺に・・・  俺に抱かれながら梨花さんはずっと潤さんの名前を・・・」 「・・・分かってる」 梨花さんは泣いていたがもう・・・ 何も言う事はなかった。 「・・・帰ります」 「あぁ、悪かったな」 ・・・梨花さんごめん・・・ 後は潤さんに本当の気持ちをぶつけて下さい。 俺ではあなたを助ける事は出来ない。 俺は二人に頭を下げ部屋を出た。 帰り道・・・ 月明かりの中を歩きながられいの事を考えていたら ポケットの中のスマホが鳴った。 れい? 俺はスマホを慌てて取った。 「もしもし・・・れいです・・・  あの、今・・・良いですか・・・?」 遠慮がちに訊いてくるれいを愛しく感じた。 ・・・あんなに勝気に俺に告白してきたれい・・・ 今のれいの弱々しい声からは想像もつかない。 ・・・それぐらい俺はれいを傷付いているんだな・・・ 「ごめん・・・」 「え・・・?  どうしたんですか、累さん・・・?」 思わず出た言葉に心配そうに答えるれい・・・ 俺はおまえに酷い事をしていたのに・・・ 黙ったままの俺に話しかけてくるれい。 「累さん?  どうしたんですか・・・?」 「いや・・・ごめん、何でもない。  それよりこんな時間にどうした?  なにかあったのか?」 「あの、会いたいんです・・・  今から・・・駄目・・です・・か・・・?」 「良いよ・・・俺もおまえと話がしたい・・・  今、何処にいる?」 「えっと・・・・舞歌さんと湊と焼肉食べた後で・・・」 「焼肉屋って・・・  翔さん達がよく行く何時ものとこか?」 「はい、多分そうだと思います」 「待ってろ・・・今、行くから・・・」 「え?でも・・・」 「良いから、待ってろ!」 「はい・・・」 俺はスマホを切って走り出した。 潤さんのマンションからあの店までそんなに距離はない。 俺は無我夢中で走る。 ・・・れいの待つ場所へ・・・ 息が切れそうになって立ち止まりそうになった時 一人ポツンと立っているれいの姿が見えた。 ・・・俺の姿を見つけて手を振るれい・・・ 「累さん!」 俺は最後の力を振り絞りれいの許まで走った。 「大丈夫ですか?  こんなに息が上がって・・・」 何でそんなに優しいんだ・・・ 俺はおまえを今まで無視してたんだぞ・・・ なのにおまえは・・・・ 「あの、累さん・・・  僕、やっぱり累さんが好きです」 「れ・・い・・・」 「累さんが好きです」 「・・・れい・・・ごめん・・・」 「累・・さ・・ん・・・・・」 「俺・・・  今は・・・おまえの気持ちに応えてやれない・・・  今の俺では・・・ごめん・・・」 「れいさん・・・」 「ごめん・・な、れい・・・」 「分かりました・・・  僕、累さんを困らせたくない・・・  だから・・・だから・・・諦めます・・・  累さん、ごめんなさい。  今まで困らせて・・・」 それだけ言って俺に背中を向けたれい・・・ 泣いてるのか? 涙を見せない為にか? 俺にそんな気を使わなくて良い・・・ おまえが悪いんじゃない! 俺が悪いんだ・・・ 俺が・・・・ 俺はれいを後ろから抱きしめた。 「累さ・・ん・・・?」 「れい、俺が悪いんだ・・・  おまえは俺を困らせてなんかいない」 「累さん・・・」 「おまえを泣かせたくなかった・・・  ごめんな・・・」 「累さん・・・」 れいが振り返って俺の頬にキスをする・・・ 泣きながら無理矢理笑顔を作って・・・ 「やっぱり・・・  僕は二宮さんが好きです。  この気持ちを変えるなんて・・・出来ないです」 それだけ言って去って行くれい。 俺はその後ろ姿に呟く・・・ 「俺も何時かおまえの気持ちに応えられる様になるから・・・」 その日が必ず来るから・・・ だから・・・ 今はこのままで・・・ ごめんな、れい・・・

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