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告白 7

スマホがきれてから15分ほどして 遠くから走ってくる累さんが見えた。 僕は累さんの姿を見つけると手を振って名前を呼んだ。 「累さん!」 累さんが息を切らし僕を真剣な顔で見る。 「大丈夫ですか?  こんなに息が上がって・・・」 累さんの優しい眼差しを感じて 「あの、累さん・・・  僕、やっぱり累さんが好きです」 「れ・・い・・・」 「累さんが好きです」 「・・・れい・・・ごめん・・・」 僕はもう一度、告白をした。 なのに・・・ どうして謝るんだよ? ・・・謝らないでよ・・・ 「累・・さ・・ん・・・・・」 「俺・・・  今は・・・おまえの気持ちに応えてやれない・・・  今の俺では・・・ごめん・・・」 「れいさん・・・」 「ごめん・・な、れい・・・」 「分かりました・・・  僕、累さんを困らせたくない・・・  だから・・・だから・・・諦めます・・・  累さん、ごめんなさい。  今まで困らせて・・・」 そうだよ・・・な・・・ 梨花さんがいるんだもん・・・ 僕なんか・・・ 駄目だ・・・ 涙が勝手に流れてくる。 こんなみっともない姿を累さんには見せられない。 だから・・・ 累さんに背をむけたのに・・・ 涙が止まらない僕を累さんが後ろから抱きしめてくれる。 そんなことしないでよ・・・ 優しくしないでよ・・・ 優しくされると僕は・・・僕は・・・ 「累さ・・ん・・・?」 「れい、俺が悪いんだ・・・  おまえは俺を困らせてなんかいない」 「累さん・・・」 「おまえを泣かせたくなかった・・・  ごめんな・・・」 「累さん・・・」 やっぱり僕・・・累さんが好きだ・・・ だから・・・ ・・・これ以上困らせる訳にはいかない・・・ 僕は累さんの方を向くと 頬にキスをして笑顔で最後の想いを伝える。 「やっぱり・・・  僕は二宮さんが好きです。  この気持ちを変えるなんて・・・出来ないです」 そのまま後ろを振り返らずに僕は走りだした。 たくさん走って、息が切れだした頃 急に胸がくるしくなって・・・ 湊・・・湊、助けて・・・ 僕は湊に電話をかけたけど・・・ 嗚咽に混ざった声は湊に届かなくて 『れい、泣いてるのか?  それじゃ何、言ってんのか分かんないって』 『・・・だっ・・・だって~~~~』 『どうした?累さんか?』 『・・・湊の・・湊の・・・バカヤロ~~~』 『八つ当たりかよ!  はいはい、わかったって・・・  で、今・・・何処だ?』 『湊ん家の・・・近く・・・・』 『え?ちょっと待ってろ!』 そう言うと電話は切れ直ぐに 湊が血相を変えて僕を探しにきてくれた。 「うわっ、汚ったねぇな~鼻水出てるぞ!」 湊が笑いながら僕の頭を撫でてくれる。 「ご・・・ごめん・・・・」 「何、謝ってんだ?」 「だっ・・て・・・もう・・・いい・・・」 「もういいって・・・諦めんのか?」 「・・・・・」 「お前の想いってそんなもんなのか?」 「違う!」 「じゃあ、頑張れ!  簡単に諦めるな!  まだ、始まったばっかだろ?」 「湊・・・」 「家まで送って行ってやるから・・・  もう、泣くな・・・れい」 「ん・・・ありがと」 「いいって!お礼だから」 「え?何の?」 「舞歌さんとの食事に誘ってくれたろ?」 「あれは・・・舞歌さんが湊もって言ってくれたからじゃん」 「れいが一緒に行こうって言ってくれただろ!  あれが無かったら行けなかった」 「湊って・・・可愛い」 「おい、馬鹿にすんな!」 「バカになんかしてないだろ!  ・・・あ、でも劇団内は恋愛禁止だから!!」 「・・・って、それ、お前が言うか?」 「あ・・・そうだった・・・」 さっきまで泣いてたはずの僕が笑ってる。 湊と話して少し胸の痛みが消えた。 湊の『頑張れ!諦めるな!』その言葉に救われたのかも。 だって僕・・・ やっぱり諦められないから・・・ 累さんのこと嫌いになんかなれない。 僕は音楽学校時代からずっと湊に助けられてきた。 だから今度は・・・ 僕が湊を助ける番だよな・・・? 湊と舞歌さん・・・ 僕と累さんみたいにはなって欲しくない。 絶対に・・・ そう思いながら僕は湊の隣を歩く。 僕の告白は叶わなかったけれど・・・

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