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告白 8

焼肉屋を出て舞歌さんと別れたけど・・・ 本当は舞歌さんを俺は送って行きたかった。 でも・・・ れいを一人にする訳にもいかず・・・ 「れい、これからどうするんだ?」 「え・・・帰るよ?」 「そうじゃなくて・・・」 「あ・・・累さんのこと?」 「ちゃんと話をした方がよくないか?」 「・・・・・」 「このままじゃ、お前・・・」 「・・・何て言ったらいいのかわからない。  もし、梨花さんが一緒にいたらどうすんの?」 「それも・・・いいんじゃないか?」 「え?」 「お前、また今日も家に帰って泣くつもりか?」 「・・・・・」 「泣くくらいなら電話してスッキリしろよ!」 俺はれいがスマホを手に取ると れいに『頑張れよ!』とだけ告げ舞歌さんを追った。 まだ、そんなに遠くまで行ってない筈。 舞歌さんの家の方向に走って行くと声をかけられた。 「湊くん?」 「あっ、舞歌さん・・・」 コンビニの入り口から出て来た舞歌さん。 「どうしたの?」 「あの・・・舞歌さんを送っていこうかと思って・・・」 「そうなの?でも、れいは?」 「累さんに電話してます。  で・・・俺がいない方がいいかなって・・・」 「そっか・・・じゃ、送ってもらおうかな」 ・・・舞歌さんが俺に笑いかける・・・ やっぱり、れいに感謝だな。 舞歌さんとの時間をくれたれいに。 ・・・俺は舞歌さんが好きだ・・・ 今がチャンスなのか? どうしよう・・・ もうすぐ舞歌さんの家に着いてしまう。 悩んでいても始まらない! こうなったら一か八かだ!! 俺は舞歌さんを帰り道にあった公園に誘うとベンチに腰掛けた。 「どうしたの?  ・・・湊くん?」 「俺・・・俺、舞歌さんが好きです!」 「え?・・・湊くん?」 舞歌さんの方を向くと彼の困った顔が目に入った。 ・・・俺、困らせてるんだろうか・・・ 「あ、あの・・・・」 「ありがと・・・・・でも・・・」 「すみません。  困りますよね・・・急にこんな事言われても」 「湊くん・・・」 「本当にすみません!」 「・・・僕は湊くんの気持ち、嬉しいよ・・・」 「本当ですか?」 「でもね・・・今は湊くんの気持ちに応えてあげられない」 そうですよね・・・当たり前だ。 え?・・・ちょっと待て、今は?って・・・ そう思ったら、勝手に唇が動いてた。 「俺はいつまでも待ちます。  迷惑ですか?」 案の定・・・ その俺の言葉に舞歌さんは本当に困っているようだった。 俺は自分の事しか考えてない自分に少し恥ずかしくなる。 なのに・・・舞歌さんは・・・ 「いつになるか分からないよ?  それでも・・・いい?」 優しい言葉を俺にかけてくれて もちろん俺は 「待ちます!」 直ぐにそう答えていた。 舞歌さんは俺の返事を聞くとフワリと笑いベンチから立ち上がり 「送ってくれてありがとう」 そう言うと手を振って帰って行った。 それから少しの間・・・ 俺は立ち上がることが出来ず ベンチに座ったまま夜空を眺める。 残念とか・・・ これで終わりとか・・・・ そんなんじゃない。 これからが始まりなんだ! 家へ帰るとれいからの電話。 近くまで来ているらしい。 泣いてちゃ分かんないだろ? 俺は靴を履くと玄関のドアを開け れいを探しに行く。 あ~あ、泣いてるよ・・・・鼻水まで出して。 「うわっ、汚ったねぇな~鼻水出てるぞ!」 頭を撫でてやると少し微笑むれい。 きっと・・・ 累さんに気持ちを伝えても断られたんだろう。 少しでも俺の幸せをれいに分けてやりたい。 「ご・・・ごめん・・・・」 「何、謝ってんだ?」 「だっ・・て・・・もう・・・いい・・・」 「もういいって・・・諦めんのか?」 「・・・・・」 はっきりしないれいについ俺は怒鳴ってしまう。 「お前の想いってそんなもんなのか?」 「違う!」 否定するれいにまるで自分に言い聞かせるよう言う。 「じゃあ、頑張れ!  簡単に諦めるな!  まだ、始まったばっかだろ?」 「湊・・・」 今は辛くても・・・ れい・・・ お前も俺も・・・ 何時かは・・・ 「家まで送って行ってやるから・・・  もう、泣くな・・・れい」 「ん・・・ありがと」 「いいって!お礼だから」 「え?何の?」 「舞歌さんとの食事に誘ってくれたろ?」 「あれは・・・舞歌さんが湊もって言ってくれたからじゃん」 「れいが一緒に行こうって言ってくれただろ!  あれが無かったら行けなかった」 「湊って・・・可愛い」 「おい、馬鹿にすんな!」 「バカになんかしてないだろ!  ・・・あ、でも劇団内は恋愛禁止だから!!」 「・・・って、それ、お前が言うか?」 「あ・・・そうだった・・・」 さっきまで泣いていたれいがいつもの・・・ ふざけたことを言うれいにもどっていた。 なぁ、れい・・・ お前のおかげで俺は舞歌さんに告白できた。 俺もお前も今は無理でも・・・ きっと、時間が解決してくれる。 人の心も時が流れるように変わっていくもんだろ? なら、お前にも俺にも可能性はあるはずだよ。 だから、待ってみよう・・・ 何時かは・・・・ 想いを寄せた人の隣に寄り添っていられる未来があるかもしれないだろ? けど・・・ 待つ身の辛さよってやつだよな・・・ 胸は温かさで満たされてる筈なのに その奥深くの一点に針が刺さったみたいな痛みが残っていた。

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