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恋愛 1

舞歌さんに告白してから3ヶ月が経ったある日 俺は思い切ってドライブに誘ってみる事にした。 「舞歌さん、今度のオフ・・・  何か用事とかありますか?」 「もしかして・・・デートのお誘い?」 「あ・・・そんなんじゃないんですが・・・」 「いいよ」 「え!本当ですか?」 嬉しさのあまり声が裏返ってしまった俺を 舞歌さんはニコニコ笑いながら 『どこに連れてってくれるの』と。 「どこがいいですか?」 「どこでもいいよ?」 「じゃあ・・・横浜なんてどうでしょうか?」 「そうだね・・・  暖かくなってきたし いいかもね」 微笑む舞歌さんが眩しかった。 それからの1週間・・・ 俺は横浜ガイドブックと睨めっこ。 そして当日・・・ 俺は友人から借りたランドクルーザーで 舞歌さんのマンションまで迎えに行けば 「大きな車だね!」 「借り物ですが・・・」 喜んでくれてるみたいでホットしていたら 「事故、起こさないようにね!」 「はい・・・」 舞歌さんから注意されてしまった。 それから? ガイドブックを参考に 山下公園から外人墓地、そして横浜中華街へ。 食べ歩きをした舞歌さんと俺はお腹一杯になり みなとみらいまで車を飛ばした。 ベンチに並んで座ると少しの間、沈黙が続いて 何か話さないとと思っていたら 「湊くん、今日は楽しかった・・・ありがとう」 舞歌さんが俺の方を向き微笑んでくれる。 それだけで俺の心は踊って 「本当ですか?  良かった!!」 俺も笑って言葉を返せば 「れいから聞いたよ?」 「え?何をです?」 「大変だったでしょ?  この辺り・・・初めてだったんでしょ?」 あいつ・・・ 余計なこと言って・・・ 「いえ、舞歌さんに楽しんでもらえるなら全然!」 「頑張ってくれたんだね・・・」 「はい!」 「ありがと・・・嬉しいな・・・」 そう言って舞歌さんはふんわりと柔らかく微笑みながら 俺を見つめてくれる。 ・・・そんな笑顔で見られると・・・ 俺の心臓が脈打つ。 けど・・・ 舞歌さんの気持ちがはっきりわからない今は・・・ この笑顔だけもらっておこう。 来週から本公演の稽古が始まる。 残念な事に別々のチームになってしまったが 俺は舞歌さんと同じ作品に出られるだけでも幸せだった。 「湊くん・・・」 「はい?」 「もうすぐ始まるね、本公演・・・」 「そうですね!」 「どう?今度の役は掴めそう?」 「いえ・・・  映画の舞台版だから映画を観てみたんですが・・・  その方のイメージが強すぎてどうしたら良いか・・・」 「・・・確かに、彼は声に特徴があるから」 「舞歌さんも観たんですか?」 「観たよ」 「あのしわがれた声なんて・・・俺には無理です。  彼は歌手だし・・・  名脇役って言われて・・・」 「真似しなくてもいいんじゃないかな?  湊くんの個性を出したらいいと思うよ」 「個性ですか?」 「うん。  今まではあんまり出してなかったでしょ?」 「あ・・・そう言われれば・・・」 「湊くんの魅力を出すにはチャンスじゃないかな?  いい役を貰ったね!」 この時の舞歌さんは俺に向けて 本当に嬉しそうに笑ってくれていた。 俺にとって一番大切な・・・舞歌さん。 あなたが笑っているのを見ると俺も幸せです。 「湊くん?どうしたの?」 「え?・・いや・・・」 「あ・・・良かったら今度は・・・  僕の手料理をご馳走するよ」 ご馳走・・・? 手料理・・・! 舞歌さんの手料理~?! ・・・って事は・・・ 舞歌さんの家に・・・ 「み・・・湊くん?  顔の筋肉緩んでる・・・」 俺は自分の顔を元に戻すと深呼吸を一回してから 「・・・ご馳走してくれるんですか?」 「うん」 「何時お伺いしたらいいですか?」 突っ走り過ぎてるかな・・・俺。 「あ・・・今日でもいいよ?  お昼食べてからだいぶ時間も経ったし・・・  湊くんさえ良ければだけど・・・」 「え?本当ですか?」 俺の顔の筋肉はまた緩んでしまったのは言うまでも無くて。 ・・・それから食材を買って舞歌さんの家へ・・・ 「お邪魔します」 綺麗に片付いてる部屋。 ・・・俺の家なんかには絶対呼べないな・・・ そんな事を考えながら部屋を見てたら 「そんなにジロジロ見ないでよ!  恥ずかしいでしょ!」 舞歌さんが慌てだして。 だから・・ 「綺麗にしてるなって・・・」 そう言えば・・・ 「狭いから掃除もすぐに済んじゃうし・・・  だから・・・かな・・・あ・・・  湊くん、座ってテレビでも見てて!」 舞歌さんから嬉しい言葉が返ってきたけど 「はい・・・  でも、お手伝いします」 任せっきりになんか出来やしない。 「いいよ、ここ狭いから」 舞歌さんから言われた言葉が勝手に脳内変換されて 狭いからいいのになって邪な考えが過ぎる俺。 舞歌さんの事になると本当に駄目だ。 「落ち着かないのでお手伝いします!」 「そう?  じゃあ、冷蔵庫からお豆腐出してくれるかな?」 「はい」 ジッとしてられない俺は舞歌さんに言われた通り 豆腐をボールに出すと中に入っていた水をこぼしてしまった。 「あっ、すみません!  布巾ありますか?」 「僕が拭くから・・・」 俺がこぼした水に舞歌さんが滑り スローモーションのように後ろに倒れる。 舞歌さんが・・・頭を打つ! 俺は咄嗟に舞歌さんの腕を掴まえ引き寄せた。 「あっ・・・」 舞歌さんを抱きしめるような格好になってしまい 舞歌さんの顔が目の前に・・・ 「ま・・舞歌さん・・・」 舞歌さんを抱きしめた俺の胸は 心臓が爆発しそうなくらい鳴っていた。

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