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恋愛 8

俺は稽古場から急にいなくなったれいを探していた。 あの日以来・・・ この稽古が始まるまで俺はれいと会っていない。 いや・・・ 会いたくても会えなかったと言う方が正しいのか。 ・・・れいの存在が俺の中で大きくなっていく・・・ だが・・・ 傷ついたれいを俺では どうしてやることも出来なくて 会うことも 電話することも出来ずにいた。 そんな俺に舞歌がれいの居場所を教えてくれる。 「れいなら屋上にいたよ」 「そっか・・・」 「累・・・  れいにちゃんと話してあげなよ」 その言葉に何が含まれてるのか・・・ 舞歌の言いたい事は痛い程分かってる。 だから・・・ 素直になろうと思い舞歌に 「わかった」 そう告げるとれいがいる屋上に向かった。 階段を駆け上がり 屋上のドアを開けると 空を眺めているれいの姿があったが・・・ 俺に気付くなりれいの顔が曇る。 「あっ・・・れい・・・」 声をかければ少し震えた声で返すれい。 「累・・・さん・・・」 「ここにいたのか・・・探してたんだぞ!」 「累さんが僕を?」 「一緒に飯でもどうかな?と思って・・・」 やはり・・・ 俺に心を開こうとしないれいに昼飯を誘ってみたが 「あ・・・僕・・・  今、メロンパン食べちゃいました・・・」 あっけなく断られてしまう。 「そっか・・・」 「ごめんなさい・・・」 俺に気を遣ってるのか それとも・・・ いや・・・ 考えるのはよそう・・・ 謝るれいに 「良いって!気にするな・・・」 声をかければ れいはすまなさそうな顔をして俺をみつめてきた。 俺は少しでも場を明るくしたくて そんなれいの鼻を軽くつまんで笑う。 それが良かったのか 久しぶりに俺に遠慮しないれいの 少し拗ねた顔がみれた。 その顔にホッとして笑うと 「何するんですか、もう!」 拗ねていたれい顔が笑顔になる。 ・・・この笑顔に何度助けられただろう・・・ 「なあ、れい・・・」 「はい」 「無理してないか?」 「何が・・・です・・・か・・・?」 「無理して笑ってないか?」 「そんな・・・ことな・・・い・・・」 「そうか?」 「累さん・・・」 「何だ?」 れい・・・ 俺にお前の気持ちをぶつけてくれ! そう願ってみたが・・・ 「・・・何でもないです!  僕、稽古の準備があるから先に行きますね!」 やはり・・・ そう簡単に俺に心を開いてはくれない、れい・・・ 俺から話を切り出そうとも考えていたが 稽古の準備があると言われてしまえば 流石に引き留める事も出来ず 「ああ」 俺は結局・・・ れいに何もはなせないまま 俺の前から去っていくれいの背中を見送るしかなかった。 ・・・笑顔だけ俺の心に残して降りて行くれい・・・ 俺はれいが好きだ・・・ だが・・・ れいが俺に向けてくれる笑顔は無理してるようで・・・ 少し痛々しくて。 そんなれいを俺は好きになっていく・・・ 前よりもずっと・・・・ 俺は煙草を1本だけ吸って稽古場に戻った。 その後の稽古場でれいは何時もの様に明るく振舞っている。 ・・・れい、そんなに無理しなくても良い・・・ れい・・・ 俺の気持ちに気付いているか? 俺はお前が好きだよ・・・ けれど・・・ 梨花さんの事があったから・・・ それを言い出せない・・・ れいの姿を追う俺に心配して 梨花さんが声をかけてきてくれた。 「大丈夫?」 「はい・・・」 「れいとは・・・」 「あれから何も・・・」 「・・・ごめんね・・・」 「良いんです・・・  俺はあの時、梨花さんを助けたかったから・・・」 「・・・」 「俺がそうしたくてしたんですから  気にしないで下さい」 「ありがと・・・」 俺と梨花さんが話している姿を見て一瞬 れいの顔が曇った様に見えた。 だが・・・ すぐに笑顔に戻る・・・ やはり無理してるんだろう・・・ どうにかしてやりたいのに・・・ 無理に笑顔を作らなくっていい・・・ ・・・俺はお前が好きだと伝えたい・・・ れい・・・ 俺はお前が・・・ 好きだよ・・・

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