43 / 51

恋愛 10

今すぐにでも帰ってしまいそうなれい。 ・・・どうしてこうなってしまうんだ・・・ 「れい・・・  まだ引きずってるのか・・・?」 「・・・え?  ・・・いえ・・・」 「だったらここにいろ!」 はっきりしないれいについ苛立ってしまい 声を張り上げてしまう。 「でも・・・」 「なあ・・・俺、ちゃんとお前に話したよな?」 「は・・・い・・・」 「なら、どうしてそんなに無理してるんだよ?」 「無理なんて・・・してません!!」 「そうか・・・?  本当に・・・?」 「本当・・・で・・・す・・・・」 「それならどうして今日、あんな顔してたんだ?  俺が梨花さんと話していた時・・・」 「見てたんですか・・・」 「見てた・・・」 「あの、僕・・・・」 俺はれいを抱き寄せた。 それ以上、何も言わせたくなくて。 「れい、もう梨花さんとは何もない・・・だから・・・」 なのに・・・ れいは・・・ 「だから?」 信じていないみたいだ。 「いい加減、俺の事・・・」 説明しようとして話し出したら れいから拒絶の言葉・・・ 「嫌だ!」 「何・・・?」 「だったらどうして?  どうして梨花さんと仲良さそうに話したりするんですか?」 「おい、れい!」 「僕の気持ち知ってて・・・酷いよ・・・  累さん・・・酷い・・・よ・・・」 「れい・・・・」 気付けば・・・ れいは俺の腕の中で泣いていた。 ・・・堪えられなかったんだろう・・・ あれから今日まで一度も涙を見せなかったれい。 俺の前では何時も無理して笑っていた。 こいつの気持ちを俺は分かっているつもりで 本当は何も分かってやれていなかったんだな・・・ ・・・俺ではれいを幸せにはしてやれないのかもしれない・・・ あの時、梨花さんを受け止めた瞬間から れいをもう・・・ ああ、そうだ・・・ 俺にはれいを幸せにしてやれない。 「れい・・・  そんなに辛いならもう俺の事は忘れろ・・・」 「え・・・?」 俺の言葉に驚いたのかれいが俺を見上げる。 赤い目をしたれいに俺は 「俺はお前が好きだ・・・  けど、俺はお前を幸せにしてやれない・・・」 今の俺の気持ちをそのままれいに話す。 「累さん・・・?」 「俺がどんなにお前に話しても・・・  俺の気持ちはお前に伝わらない・・・」 「・・・・・・」 「俺は梨花さんを抱いた時からもう・・・  お前を想う権利なんて無いんだよ・・・」 「累・・・さ・・・ん・・・?」 れい・・・ そんな切ない瞳で俺を見ないでくれ。 「れい、俺の事を嫌いになれ・・・」 「そんなこと・・・できない・・・」 今にも零れ落ちそうな涙で溢れた瞳で 俺をみつめるれい・・・ だが・・・ 俺は・・・ これ以上、れいを傷つけない為に・・・ ああ、そうだ・・・ お前を傷つけない為に言うよ。 「でなければ俺が・・・お前を嫌いになる。  俺がお前からの告白を忘れる」 「累さん・・・」 「ただの劇団の上級生と下級生だった二人に戻ろう」 「・・・・・・」 俯いて何も言わないれい。 けど・・・ これが一番良い・・・ 報われない想いもあるんだよ、れい・・・ 俯いたまま握りしめた拳に涙の粒を落とすれいに 「れい、もう少しここでゆっくりして行け・・・  俺はソファーで横になるからお前はベットを使え・・・」 そう言えば 「僕、帰ります・・・」 れいらしい言葉が返ってきたが 「お前も役者なら稽古までゆっくり身体を休めろ!」 「でも・・・」 「でもじゃないだろ!  いいか?今はここで休んで稽古に備えろ!」 「は・・・い・・・」 俺はれいに上級生らしく言葉をかけた。 れいを一人ベットに残し 俺はソファーに横になった。 ・・・休めるはずもないのに・・・ 時間になって稽古場に向かう為、俺達は部屋を出る。 ドアを開く前に俺は俯いたままのれいに 「れい、さよならだ・・・」 冷たく言葉を吐き捨てた。 自分の想いも断ち切るようにして。

ともだちにシェアしよう!