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Virgin Mary 3

「圭人・・・起きて。  朝だよ?・・・圭人って・・・」 「ん・・・おはよ・・・馨さん・・・」 「朝ごはん、食べる?  作ったんだけど・・・」 「ホントに?  寝坊助の薫さんが?」 「一言多いって!」 悪戯っ子のような顔をして俺を見る 圭人の頭を軽くはたいてやる。 そしたら・・・ 『もしかして怒っちゃいました?』なんて訊いてくる圭人。 俺の好きな・・・穏やかな時間。 久しぶりに圭人ん家のキッチンに立った。 ・・・なんて思ったけど トーストと目玉焼きにサラダを作っただけだから こんなの料理した内には入らないか。 まあ、圭人よりかは上手く出来たとは思う。 圭人は・・・ あまり料理が得意じゃない俺からみても 下手と言うか・・・ レンチンしか出来ないからなぁ。 そんな事を思って笑いそうになってたら 『何かあった?』なんて言いながら 席に着いた圭人の前に皿を並べる。 テーブルに並べた朝食を見て『うまそう!』って言う圭人に 『うまそうじゃなくってうまいの!』と返せば 『そうだね!』って圭人の笑顔。 それが嬉しくって、ちょっと泣きそうになってしまう。 俺の好きな・・・優しい時間。 俺はまた明後日からドラマの撮影に追われる。 当分、ゆっくりと圭人と会えない。 1ヶ月前・・・ 俺は圭人と・・・ あの日からずっと 圭人と俺は心だけ繋いできた。 色んな話をしたし、デートもした。 互いの時間に余裕があればこうして部屋に訪れたりして 出来るだけ一緒の時間を過ごすようにしてきた。 心をしっかりと繋がった筈・・・ だけど・・・ 俺は圭人とカラダも繋ぎたいのに・・・ 圭人・・・ キミは心だけで満足してるの? それとも・・・ やっぱり他の誰かに抱かれた俺じゃ・・・イヤ? キミだけのVirgin Maryになれなかった俺では・・・ イヤなの? 「どうかした?馨さん?」 トーストを手に持ったままで ボーッと考え事をしてしまっていた俺を 心配そうに見つめる圭人。 「あ・・・明後日にはまた暫く  離れ離れになっちゃうんだなって思って・・・」 考えていた事を悟られたくなくて 仕事の話ではぐらかす。 「しょうがないよ、それは。  仕事ですしね・・・」 「そうだね・・・」 「馨さん、そんな顔しないで・・・」 さっき考えていた事が顔に出てしまってたんだろうか? 圭人が心配そうに俺に話しかけてくる。 「うん・・・」 「ずっと会えないってわけじゃないでしょ?」 「・・・」 「何か不安なことでもある?」 「不安って言うか・・・ちょっと淋しい・・・」 「そんなこと言わないで。  仕事は仕事・・・何時もそう言ってるあなたらしくないよ?」 そう言われて・・・ 『離れたくない』って言いそうになった言葉を飲み込んだ。 きっと・・・ 口に出せば圭人は困ってしまう。 もっと深く圭人と繋がりたい・・・ そう態度で示しても何気なくかわされる。 俺の気持ちを・・・ 圭人はまだその時じゃないと思ってる? だから・・・なのかな。 こんなに淋しく感じてしまうのは。 それとも・・・ Virgin Maryじゃない俺に あの夜以来・・・ 触れようとしない圭人に 俺は不安なのかな・・・? もう・・・ わかんないや・・・ こうなると心に蓋をしてしまう俺。 役者だからなのか・・・ 拒絶されるのが怖いからなのか・・・ 俺は圭人が求める俺を演じてしまうようになる。 想いを口に出せなくなって・・・ それに気づいて欲しいのに・・・ 圭人に・・・言えない。 今のこの穏やかで優しい二人の時間を壊したくなくて。 ねぇ、圭人・・・ キミはこれから俺とどうなりたいの? 『好きです』 あの言葉は・・・嘘だったの? こんなにこころを繋いでもまだ・・・ カラダを繋いでくれないままじゃ・・・ 俺・・・ 不安で仕方が無いよ。 Virgin Maryじゃないって一番してるのは 俺なんだから・・・

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