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第5話
シャワーを浴びようにも包帯が邪魔で解いた。強く擦らないように気をつけて洗ったが、着替え終わって、自分では首に包帯を巻くのが難しく、四苦博しながらなんとか巻いた。
切ってしまった首輪を手に取る。
和人には申し訳ないことをしたなとは思うが、事故だから仕方がない。
和人も納得してくれるだろう。
スマホの電源を落としたままだったのを思い出したけど、しつこくかけてきそうだと思い、目覚まし時計をセットしてベッドに潜り込んだ。
「……っん……」
喉の違和感に目が覚めた。ああ、昨日怪我したんだった……。
だけど、これは……。
「か、カズ、とさ、ん?」
狭いシングルベッドに無理やり入り込んで僕を抱きしめているのは和人だった。微かに香る甘い匂い。背中から包み込むように抱きしめられている。
「ん……ひなた。本当にひどい声だね」
眠そうにあくびをしながら和人が返事をした。
「な、んで?」
「喋ったらダメだよ」
言われて頷く。
「アキから聞いたよ。散々だったねぇ」
抱きついたまま和人は話して、「もうちょっと眠い」と目を閉じようとする。
「か、ず、とさん。なんで、いる、の」
掠れて声がうまく出せないし、痛みもある。炎症を抑える薬は飲んだけど、痛みはとってくれないようだ。
「ん? さっきついた」
部屋を見渡して、まだ夜が明けてないことを知る。こんな時間で飛行機は飛んでないはずだ。どうやって来たのだろう。
「寝るよ」
言いながらぎゅっと抱きしめられて、すぐに寝息を立てる和人に誘われて眠ってしまった。
起きるとベッドの上には和人の姿は無かった。
だけど、何かいい匂いがする。
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