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第6話

 起き上がってリビングに続くドアを開けると、「ああ、起きたんだね。朝ごはん勝手に作ったよ」と和人が笑った。 「な、んで?」 「連絡取れないし、ユキ君から聞いたけど、心配になって来ちゃった」  来ちゃった。なんて言って来られる距離じゃない。 「しご、と……」  目覚まし時計は和人が止めてしまったのだろう、慌てて時間を確認すると既に始業時間は過ぎている。 「大丈夫だよ。アキから今日は休んでいいって連絡きたから」  休んでいいって、仕事に支障が出るような怪我でもないのに。 「顔洗っておいで、すぐに食べられるよ」  キッチンから和人は言って、勝手に食器を取り出していた。トイレと風呂が一緒になったユニットバス。そこについている小さな洗面所で顔を洗って身支度を整える。寝室に戻って服を着替えると、「はい、どうぞ」と和人がテーブルに着くように促した。一人暮らしで狭くなるからローテーブルしか置いてないから、ラグの上に座った。  テーブルの上には甘い香りのリゾットとヨーグルト、オムレツが用意されていた。 「食べていいよ。リゾットはちょっと熱いから気をつけて。ほら、オムレツはケチャップかけると染みるかもしれないから、ホワイトソースにしたよ。好き嫌いはない?」  和人は相変わらずテンション高く喋り続ける。 「ふーって、ふーってしてあげるよ」  和人はすぐ横に移動すると、リゾットをすくった。 「いいっ、いい、でゲホ、ケホケホ……」  痛みに喉を押さえた。 「ああ、だめだよ。喋らなくていいよ」  こんな食材はうちの冷蔵庫には入っていなかったはずだ。それに飲み込みやすい料理になっている。和人が料理をできることは知らなかった。 「これはねぇ、チーズリゾットだよ。玉ねぎとほうれん草は柔らかいから大丈夫だよね?」  口の前にスプーンを持ってこられてじっと見つめられる。  スプーンを受け取ろうと手を出すけど、「あーん」なんて言うから、口を開けた。  チーズの効いた優しい味のリゾット。お粥よりは食べやすい。  和人が言ったとおり野菜は柔らかくて喉に引っかかりは感じなかった。 「はい、あーん」  次を掬って口元に差し出されて今度はスプーンを受け取った。和人は抵抗なくスプーンを渡してくれた。  だけど、横でじっと見られて食べるのはなんだか食べにくい。  この部屋にはテレビもないからから意識を他にもって行き場がない。

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