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第11話

「Get your hands off me!」  大声で言うと喉がひどく痛んだ。口に中に血の味が広がるのが分かった。周りにもわかるように抵抗するが、関わり合いたくないのか誰も仲裁に入ってくれない。見渡すと葉山が彰を抱いてこっちに向かっていた。  男はしつこく誘ってくる。  押し問答を繰り返していると、「沢木さんどうしたんですかっ」葉山が駆け込んできた。 「その手を離しなさい。この人は僕の連れですよっ」  男は日本語が通じない様子で、首を傾げて葉山を押し退けると僕を連れて行こうとする。  男の手がストールにかかって、引かれる。痛みに声を上げると、「You have such a great taste!」と僕の首の痕を変な趣味と捉えていやらしく笑った。ストールを取られて包帯が見えると、その包帯に手をかけてくる。  抗っても体格のいい男はびくともしない。 「Get down to get down」  男はいやらしい顔をして笑いながら腕を引く。 「ゲホッゲホッ……げっほっ……うぇえっ」  咳き込んで地面に倒れ込んだ。喉の痛みがひどくて、両手で喉を押さえる。 「沢木さんっ」 「Is it a strange illness?」  男は僕が変な病気を持っていると思ったのだろう、慌てて身を引くと走るようにして去って行った。 「沢木さん。大丈夫ですか?」  葉山が地面に座り込んで咳き込む僕の背中をさすった。 「水。これ」  持っていた鞄から水筒を取り出して差し出してくれた。ゼェゼェと息を継いで、地面に座って数口水を飲んだ。喉は激しく痛んだ。 「声、出したから……」  心配そうに見つめられて、大丈夫と手を挙げた。 「ひなたっ、ひなたっ。どうしたの!? 転んだ?」  背後から和人の声がした。振り返ると血相を変えた和人が走ってきたところだった。 「変な男の人に絡まれてしまって、沢木さんが大声出してしまって」 「ええっ。ひなた大丈夫?」  和人は周りを見渡して男がいないか確認して僕の横に座り込んだ。 「大丈夫? よく見せて」  和人は僕の両頬を手で掴むと口を開けるように促す。 「ああ、ひどいね。血が出てる」 「どうしよう。病院に行った方がいいかな?」

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