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第21話
「彰。沢木がケーキ買ってくれたぞ。よかったな」
「あいがとー」
彰がいつものように足に絡み付いてくる。抱き上げると首に両手を回して抱きついてきた。
「……ちょ、いた。ごめ」
「ああ、彰。悪いな」
桐生が慌てて彰を引き離した。
「しゃわぁきっ」
彰がまだ抱っこしたいと両手を伸ばしてくる。
「ほら、ケーキ。ユキに渡してこい」
桐生が渡すと彰は喜んで受け取ってキッチンに走っていった。
中身が大丈夫か心配になった。
「沢木君おかえり」
リビングから和人が声をかける。
おかえりのハグをするんじゃなかったの?
軽く会釈をした。和人は、「俺にもお土産ある?」と子どものように聞いた。
甘いの好きですか?
頷くと、「何かなぁ?」とニコニコ笑いながら、「帰ろう」と言った。
今日は夕飯はどうするの?
ここで食べないの?
「帰りにスーパーに寄ろう」
言われて頷く。今日も何か作ってくれるらしい。
「和人兄。あまり沢木を引っ張り回すなよ」
「そんなことしてないよ」
「沢木も疲れてる時は追い出していいからな」
桐生は言いながら、「仕事の心配はいいからしっかり治せよ。明日の予定は後で連絡する」と言って僕の頭を撫でる。
「アキ、触るな」
なんで触ってほしく無いんですか?
「はい。はい」
桐生は玄関まで見送りに出てきた。
手を振って車に乗り込む。
「シートベルト首に当たらない?」
助手席に座ったら心配して手を伸ばしてシートベルトを直してくれた。顔が近づいて、シートに背中をぐっとつける。
触れそうな位置に顔がある。
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