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第27話

「ひなた。この書類を見てほしんだけど」  和人は自分のカバンから書類を取り出した。 「少し前から話は進めてたんだけど、やっと具体的に進み出したんだ」  和人から書類を受け取る。  新規事業計画と書かれたそれは新しいレストランの誘致計画書だった。  オープニングスタッフの名簿とレストランのコンセプト、店内の見取り図とインテリア。メニュー表、価格表、収支計算表などが具体的に書かれていた。 「昼間はカフェで夜はレストランバーにしようと思ってる」  頷いた。  桐生の仕事とは全く違う内容だ。  だけど会計などは見慣れたものだ。 「ひなたは会計士の資格も持ってるよね?」  大学在学中に資格は取っている。秘書として必要になるからと取得したのだ。  秘書検定よりも数字を追いかける勉強は面白かった。 「ここの数字だけど……」  和人は数字の書かれた書類を僕に渡した。僕は他の表と照らし合わせて収支の計算をし直してチェックを入れた。仕入れ状況や在庫、メニューの価格から算出できる収支と人件費……。  和人が自分のタブレットを開いて書類のデータを見せてくれた。それを指差しながら指示を出す。  声が出せれば簡単な説明なのに、タッチペンを使って指示を書き込んだ。 「さすがひなただねぇ」  和人は何度も頷いて書類を作り直した。 「俺は店をプロデュースやメニューを考えることはできるんだけど、どうも計算は苦手で困ってたんだ」 『職場にいるでしょ?』  タブレットの画面に書き込んだ。 「個人的なことには使えないからね。この出店は俺個人の計画だから」  個人?  プライベートで出店するってことだろうか。  新規開拓と言っていたから桐生家の新しい事業かと思っていた。 「シェフには心当たりがあるし、立地もいいから手付金も払ったんだ。オープンは夏。それまでに向こうを引き払ってしまおうと思ってる」  和人はいくつも店を手がていると言っていた。だから簡単に新しい仕事を始めるなんてできないはずだ。  少し前からって言ってたけど、それはいつからのことだろうか。

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