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第37話
何度も呪文のように唱えて、通りを見渡すけど和人の姿はない。
ああ、どうしよう。桐生に連絡がつけば桐生から和人に連絡を入れてくれているかもしれないし。
今日はホテルを取って、明日もう一度この辺りを探した方がいいかな。
ため息をこぼして、自分の息を熱く感じた。
ああ、これは……。
発情期は予定ではもう数日後だけど、ずれる場合もある。
熱さを自覚すると途端身体中が熱いように感じる。ゾクゾクとした感覚が背中を襲う。
だめだ。早くホテルを……。
熱い。
唇を噛み締めて歩き出すけど、濡れた服が纏わり付くのでさえ快感に変わる。
近くにαがいたら大変だ。
鞄を握りしめて傘を持って、壁伝いに進む。
数歩歩いて、止まってを繰り返す。
「What's the matter?」
声をかけられて、「It's okay」と返事をした。
「Do you need a hand?」
「No.thank you」
断ってゆっくりと進む。
和人が来てくれたらいいのに。
お前の発情期は俺が全部もらう。これから先のヒートも全てって言ったのに。
どこにいるの。
和人。
僕が追いかけた時にはすり抜けてしまう。
運命の悪戯なのか。僕には運命は掴み取れないのだろうか。
信じた桐生も、運命だと信じた和人も。
みんな僕には手に入れられない。
「Are you inviting?」
卑下た笑いが聞こえて顔を上げると若い男が数人取り囲んでいた。
次々に話しかけられるが、「No」と答えるしかできない。甘い香りが自分から溢れているのだろう。
男たちの中にはαがいるようで、息遣いの荒い男が僕の腕を掴む。
その目はギラギラと欲望を放っている。
『ズクン』と身体が震える。
いやだ。こんな男を求めたくない。
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