39 / 55
第39話
和人と一緒にやってきた男が声をかける。和人が無理矢理に僕を離すと、「俺のアパートに連れて行く」と言って、和人が腕を掴んで歩き出す。足がもつれて引き摺られるようにして連れていかれる。
「もうすぐだから」
和人がすぐそばのアパートに入った。明るいエントランスには管理人がいて、和人が挨拶をするとドアを開けてくれた。
「ここの3階」
エレベーターに乗り込むと同時にキスをした。噛み付くほどに合わせた口づけは歯がぶつかって痛みを伴うけど、甘い舌には叶わなくて背伸びをして求めた。両腕を回して引き寄せて激しく口づけを繰り返す。
すぐに目的の階について、「待って、待って」と言いながら鍵を開けた。
「うっ、わぁ」
足がもつれて玄関に倒れ込んだ。
「も、ぅ、助けて。和人、欲しい」
自分でも熱を持て余して涙が溢れる。甘い香りが溢れている。
和人に跨るようにして身体を起こすと、雨ですっかり濡れたジャケットを脱ぎ捨てる。
「熱い……和……」
「分かった。ひなた。分かったからまずは風呂に……」
「なんでっ……すぐって……」
「すぐなのは俺の家だって。ひなた」
頷いて和人の着ているYシャツのボタンを外そうとするが指先が震えて外れない。
「ひなた。待って」
和人が僕を押さえて起き上がる。僕を押さえつけたまままだ履いたままの靴を脱いで、僕の靴も脱がせた。
「落ち着いってって、できないよな」
和人が僕を抱きしめて、「ほら、全部渡すから」と言った。
「早くっ……」
「でも、ちょっと待って」
和人が僕を離すと手を繋いで廊下を進んでいく。
「ここで待って」
「やだぁ……」
「大丈夫。すぐに戻る」
リビングらしいそこの椅子に座らせられるけど、和人の腕を掴んだ。
「待って。すぐだから」
和人が奥の部屋に向かっていって、ガタガタ音がしてすぐに戻ってきた。
「ヒート落ち着かないと……」
ともだちにシェアしよう!