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この胸の高鳴りは……✦side蓮✦1
撮影本番。
ショッピングモールで、二人がデートをするシーン。
シーン1。イートイン。
二人でソフトクリームを手に持って、スタンバイ。
ショッピングモールの閉店後に、大勢のエキストラと一緒に撮影をする。
先程、秋さんと一緒にこの撮影フロアに入った。
秋さんは「今日はよろしくお願いします」と何度も頭を下げながら、エキストラの方一人ひとりと、目をしっかり合わせていた。
全員と個別に挨拶はなかなかできなくても、一人も見落とさないよう目だけは合わせよう、という思いがすごく良く伝わってきた。
本当に、とても優しい挨拶だった。
エキストラの方に、ここまで丁寧に挨拶をする人を正直初めて見た。
すごく感動して心があったかくなった。
俺は今までの自分を反省して、秋さんを見習って一緒に挨拶をして回った。
どんなに端役でもエキストラでも、みんなで作り上げるドラマなのだとあらためて実感した。
監督のスタートの声が響いた。
「んっ、いちごソフト美味しい! ね、そっちの牧場バニラも一口ちょうだい?」
イートインスペースで、肩がくっつくほど寄り添ってソフトクリームを二人で食べている。
手に持っているソフトを「ほら」と口元に寄せてやると、パクッと大き目に一口食べた。
「お前、一口でかすぎだろっ」
思わず吹き出した。
「バニラも美味しいっ」
「おい、そっちのもよこせよ」
恋人のソフトクリームに、めちゃくちゃ大口でかぶりついた。
「あっ、ちょっと食べすぎ! もうっ」
「ははっ。付いてるぞ、クリーム」
「えっどこ?」
口元についたクリームを指で拭ってペロッとなめると、恋人はみるみる顔を赤くした。
「ちょっ……なにやって、るの」
真っ赤に照れる姿を見て、無性に可愛くてどうしても我慢ができなくなった。
ゆっくり唇を近づけると、目を見開いて顔をそむける。
「……ここ、どこだと思ってるのっ」
耳まで真っ赤にして、ささやくように怒ってきた。
「別に、いいだろ」
「い、いいわけない……だろ……」
「俺は見られたって全然平気だけど」
「ば、かじゃないの……。もう。溶けちゃうから早く食べてっ」
照れた顔でプリプリ怒られながら、二つのソフトを交互に食べ合った。
監督のカットの声が響いた。瞬時に頭を切り替える。
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