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この胸の高鳴りは……✦side蓮✦2
「蓮、俺バニラのが好きなんだけど。残り交換して?」
「あ、うん。いいよ」
「やった」
いちごとバニラをスッと取り替えて、バニラのコーンにかぶりつく秋さんの顔は、まだ撮影のなごりで、ほんのりピンクに染まっていた。
「蓮はどっちが好き?」
「え、あ、バニラ?」
「あ、マジか。んじゃ返すよ」
「あ、えっと、ごめん、今の適当だった」
「ん?」
「あ、なんか今頭回ってなくて。いちごも好きだしそっち食べていいよ」
「……ん。ありがと」
最近の俺はちょっと、いやかなりおかしい。
撮影が終わっても、なぜだか秋さんがずっと可愛いのだ。すごく可愛くて本当に困る。
今の「ありがと」も、照れてはにかんだように見えてしまってドキッとした。
脳内フィルターがそう見せているのだろうか。
ドラマの中の秋さんと現実の秋さんが、同じに見えてしまう。撮影後も切なくなるほどに、愛しいという感情がずっと続く。
いつからなのかは、はっきりしてる。
先日のキスシーンからだ。
秋さんと唇を重ねた瞬間、体中が燃えるように熱くなった。
言葉では言い表せないくらいの歓喜が、身体中をめぐった。
お互いの愛しい感情が、つないだ手の指先から流れ込む感覚。
ただ役として感じてるだけなのか、それとも俺自身が感じてるものなのか、ずっと分からなくてモヤモヤしている。
恋愛のからんだ役は初めてで他と比べようがなく、どうしても判断がつかなかった。
カットがかかっても秋さんはしばらく役が抜けきれなくて、ずっと熱のこもった瞳で俺を見ていて、そのとき俺は……。
抱きしめたい。
腕の中に閉じ込めてしまいたい。
そう思ってしまった。
そんな風に思う自分に、とても戸惑った。
俺もまだ役が抜けてないのか、と思ったがそうではない。
では感情だけ役を引きずっているのだろうか。
そんなことがあるのだろうか。
キスシーンのあと、ドラマの中の二人が恋人の距離に変わった。
撮影中ずっと恋人として接しているからなのか、終わったあともずっと俺は……。
手をにぎったままでいたい。
肩を組んでいたい。
抱きしめていたい。
キスがしたい。
そんなことを毎日思ってしまう。
本当に俺は、最近おかしい。
たぶんきっと、ドラマと現実がちょっと混乱しているのだと思う。
ショッピングモール内で、その後もいくつかのシーンを撮影した。
ゲームセンターの撮影はすごく楽しかった。
普通にゲームで競い合ったり、UFOキャッチャーで秋さんがすねたり。
台本が無く、自由に遊んでという指示だったので思う存分楽しんだ。
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