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確かな気持ち✦side蓮✦1

「第六話まであと一時間。ええっと。予告にも出てるけど、今日もキスシーンがあります。……ってこれ恥ずかし……っ」  カウントダウン動画の撮影でキスシーンの告知をするように言われて、スタートから顔が火照ってしまった。  今回は局内の廊下で簡単に撮影をしている。   「蓮がめっちゃカッコイイから、みんな見てね」  横から割り込むようにやってきて腕を組んできた秋さんが、そんなことを言うのでかぶせ気味に返す。 「秋さんがめちゃめちゃ可愛いから、みんな絶対に見てね」 「……っ」  そこでスタッフがすかさず「秋人くんが照れてるの、珍しい」と声を上げた。    撮影中でもスタッフが声の参加をする。SNS動画は何でもありで本当に楽しい。  秋さんを見ると、頬がほんのり赤くなっていた。   「え、本当だ。秋さん可愛い」 「……お、俺より蓮のが絶対赤いからなっ」 「うん、俺のは通常運転だから」  その返しを聞いた秋さんが、ぶはっと吹き出して笑う。 「最近、開き直りがひどいな」 「うん、もう諦めた。でも今日は秋さんもおそろい」  二人でなんとなく見つめ合ってしまって、照れて同時に目をそらす。 「なにこれ、恥ず……」 「あのこれ撮り直したほうが……」 「もちろんこのまま流しまーす」 「ええぇ……」    スタッフがクスクス笑ったところでレンズが下りた。    今までで一番グダグダで、すごく恥ずかしい動画になってしまった。でも。 「秋さん。SNSの反響楽しみだね」 「……っはぁ?」    秋さんが照れてる動画なんて、めちゃめちゃ貴重すぎる。俺も観たい。反響も知りたい。 「明日どんな反響あったか見せてね、秋さん」 「……いいけどさ。お前もそろそろ自分で見れるようになれよ」 「うーん。スマホよく分かんなくて。じゃあ秋さん教えて?」 「……とりあえずアプリ入れりゃいいんだよ。ちょっと貸してみ?」  廊下の壁を背に二人で寄り添ってアプリの使い方を教わっていると、スタッフにSNS用にと写真を撮られた。  あの台風の日から、どうにも距離感がますますおかしくなってる気がして、気がつくと秋さんに近づきすぎてて時々焦る。  今の撮られちゃったけど大丈夫かな、と冷や汗が出た。  秋さんは今のこの距離感どう思ってんだろう。それが気になる。   「え、距離感? どこか変わった? うーん?」    秋さんとの距離感が心配になって、楽屋に戻ってから美月さんに聞いたら首をかしげられた。 「今までと変わらないと思うけど?」 「え、本当? あれ?」  もしかして、変に意識しすぎて気になってるだけなのだろうか。   「しいて言うなら、秋人くんが変わったかな」 「え、秋さんが、どう変わったの?」 「なんか、よく照れてて可愛くなったかなぁ」 「……ええ? 美月さんの願望がそう見せてるだけじゃない?」 「そ、それは……うあー! 否定できない!」  頭を抱えて声を上げる美月さんに、やれやれとため息をついた。 「そうそう。結局あれから全然検証してないけど、なんかやってみる? うーん、腕組むとか?」  すっかり忘れていた。検証なんて。というかもう必要がない。俺の気持ちははっきりと分かったし。  

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