68 / 173

幸せな時間✦side秋人✦2 ※

「これからは何度も聞けるね、秋さんの可愛い声」 「……お……前、いい加減にしろよ……」  なにも警戒せず無防備でいる蓮の中心のそれに、俺は手を伸ばして握り込んだ。 「あぁっ! え、ダメ! 無理、無理だからっ」  逃げようとする腰を足でガッチリ抑え込み、ガチガチのそれを数回しごいてやると、蓮は小さくうめいて呆気なく俺の手に精を放った。 「え、早っ」 「…………秋さん……ひどい」  泣きそうな声を出して両手で顔を覆い、隣にゴロンと背中を向けて寝転がった。  俺を気持ちよくさせるだけでこんなに限界だったのかと思うと、あまりに可愛すぎて思わず笑みが漏れた。   「……だから……ダメだって言ったのに……」 「俺も、やめろっつった」 「…………同じだね」 「うん、同じだな」  はぁぁ、と深く息をついて、蓮はむくっと起き上がった。真っ赤な顔で俺の手をティッシュで拭うと、覆いかぶさるように抱きしめてきた。  俺もぎゅっと抱きしめ返す。   「お前、やっぱ可愛いな」 「……秋さんのほうが、可愛いからねっ」 「ん。そういうことにしとくか」  クスクス笑う俺に、蓮は真っ赤な顔のまま、射るような目つきで噛みつくように唇を奪った。  何度も角度を変えてチュッとリップ音で離れては、またキスをする。  出したあとも終わらない……甘い時間。  本当に俺たちは恋人になったんだ……。  幸せすぎて……怖いくらいだ。   「秋さん、これ使うね」  チュッとキスを終わらせて起き上がった蓮が、サイドテーブルからローションを手に取って言った。 「……ん」    いよいよだ……と思い、心臓が暴れた。  不安や恐怖心は、欠片もなかった。  もう俺は、とにかく早く蓮がほしいんだ。 「あ、イッたばかりだから、まだつらいかな?」 「そんなの……いい。大丈夫だって」 「……痛かったりつらかったりしたら、絶対に言ってね」 「ん」  痛くても絶対に言わないけどな、と心の中で答える。  痛くてもいいから早く蓮がほしい。  もう本当に蓮は俺のものなんだと、早く安心したい。  数時間前までの俺は、撮影が終わったらもう二度と蓮に会えないかも……と絶望していた。  最悪なことを想像してしまったからか、蓮と離れるのが死ぬほど怖い。失うのが怖い。  だから、もう本当にこれからはずっと一緒なんだと、早く安心したい。  もう俺たちは、ちょっとやそっとじゃ壊れない仲なんだと、もっと信じられるようになりたい。  もっと蓮に近づきたい。  早く蓮と、繋がりたい――――  ローションで準備した俺の後ろに、蓮の指がそっとふれた。 「痛かったら絶対言ってね」 「分かったってば」  俺が苦笑すると、蓮は少しホッとしたような顔をした。  蓮の指が少しづつ入っては出て、また少しづつ入っては出る。だんだん深くなっていく。 「……ぅ、……ぁ」 「秋さん……痛い? 大丈夫?」 「……ん……大丈夫……」 「……本当に大丈夫?」  何度も心配そうに確認する蓮に、俺はまた苦笑した。  ドラマ出演が決まって、色々調べた過程で男同士のやり方を知った。  蓮は、専用ではないが、指にちゃんとゴムをはめた。指にも俺の後ろにもこれでもかってくらいに、ローションを垂らした。  あのときに見た、まるでお手本のようなやり方で、こんなに優しく進める指が痛いわけがない。  蓮が優しすぎて胸がぎゅっと切なくなった。   「本当に全然痛くねぇよ……。すげぇ優しくしてくれてるから……」 「……よかった」    蓮の表情がやっと安心したように和らいだ。  繋いでる手の指をスルスルと撫でると、蓮はギュッと握り直して優しく微笑んだ。  本当に……大好きだよ、蓮。  好きすぎておかしくなりそうだ。  もう好きなんて言葉じゃ、言い表せないくらいに……。

ともだちにシェアしよう!