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恋人の距離✦side秋人✦2
蓮はそっと唇を離すと、倒れ込むようにして俺をぎゅっと抱きしめ、繋いでる手を口元に寄せて口づけた。
俺は蓮の頬に手をふれた。
「大好きだよ……俺の蓮」
「大好き……俺の秋さん」
頬を染めて、蓮は俺に合わせてそう言った。
「……うわ、やば……それ、めっちゃいい……っ。もう一回言って」
「俺の秋さん、大好き」
「……やばい、めっちゃ幸せ」
ぎゅっと蓮を抱きしめた。
大好き、俺の蓮。
もうずっと離れたくない。
耳元で蓮が、はぁぁ、と深い息をついた。
「……これ、本当に夢じゃない……?」
「え?」
身体を起こした蓮が、涙目で俺を見つめる。
「昨日からずっと……俺……寝てたりしてない……? 本当に現実?」
「蓮……お前まさか、まだ目ぇ覚めてねぇ……とか?」
よく見ると、なんとなくまだ目が座ってるというか、視線が合わない感じがする。
「……まだ……ふわふわしてる……夢みたいで……。いつもならまだぼーっとしてる時間だし……。今まだ目が覚めてるのかどうかも、分かんない感じ……」
「マジか。そんな重症なんだ、寝起きの悪さ」
「…………うん。ごめんね」
と、チュッと唇にキスをする。
「大好き、秋さん。もし夢なら覚めてほしくない……」
そんな可愛いことを言う蓮に、俺はかなり重くて怖いことを言ってみた。
「俺が、蓮とずっと離れたくないから監禁するぞって言っても?」
きょとん、として「それ、幸せすぎる」と笑った。
あ、これはまだやっぱり覚醒してないやつだと分かって、蓮に急いでシャワーを浴びに行かせた。
その間に俺は洗面所を借りてキッチンを借りてと、色々と準備をしていると蓮がシャワーから戻ってきた。
キッチンに立つ俺の背後からぎゅっと抱きついて、チュッっと頭にキスをする。
「で、いつから監禁してくれるの?」
「えっ、あれ、やっぱ起きてたの?」
「何があったかは覚えてた。ちょっとぼやっとしてるけど」
「はー、なるほど。んーじゃあ今日から監禁かな」
「やった。じゃあもうずっと一緒だね」
「……って、ばぁか」
頭を後ろに倒して後頭部で軽く叩くと、顎にコツンと当たる音。
蓮は、痛い痛いと言いながらずっとニコニコしていた。
二人で朝食を準備しながらテーブルに並べながら、目が合うたびにお互いに顔を近づけて、チュッとキスをして微笑み合った。
「お前さ。寝起きのときの恥じらいはどこ消えた?」
「ん? よく覚えてないけど、たぶん夢か現実か分からなくて混乱してたからじゃないかな? 今は昨日のことも全部覚えてるし。恥ずかしいけど、嬉しいが勝ってるから」
ちょっと頬を染めてニコニコしながら、またチュッっと口づけた。
「マジか。こっちのワンコも好きだけど……あっちのワンコも可愛かったのに……」
椅子をペッタリとくっつけて腰を掛け、またチュッとキスをする。
「あ、じゃあもう撮影で赤面しないんじゃねぇ?」
「んー? どうだろう? うーん?」
二人で、いただきますと手を合わせた。
蓮はまだ首をかしげて考えながら、パンとスクランブルエッグを頬張っている。
「今日の撮影、どうなるのか楽しみだな」
「……あ、今日もキスシーンだ……」
自分がどうなるのかも、ちょっと心配だ。
今でさえこんなにドキドキしてるのに、蓮とこうなれたあとに大勢のスタッフに囲まれて、平静を保てるのか自信がない。
「ほんと、BLドラマでここまでキスシーン多いの、珍しいよな。…………でも……もし無かったら、きっと気持ちに気づけなかったから……あってよかった」
え、という蓮のつぶやきが聞こえて隣を見る。
「…………キスシーンで……気づいたの?」
「……うん。一番最初のキスシーンのとき…………。あれ、演技じゃねぇよ。俺の……本気。セリフも表情も……アドリブのキスも全部」
俺の告白に、蓮の顔が見るまに真赤に染まって、両手で顔を覆ってうつむいた。
「まってまってまって…………終わったあと、役が抜けてないって思ってたのって……」
「役なんて……そもそも入ってねぇよ。キスシーン全部……俺の本気」
思い出すだけで、あの時の切ない気持ちがよみがえって胸が痛い。
蓮は、はぁぁ、と深く息をついて言った。
「……俺、あの日からずっと秋さんが可愛くて……。撮影終わってもずっと可愛くて……。どうしてなのかってずっと悩んでて。……そっか。全部、秋さんだったんだ……」
顔を覆ってた手をおろして俺の手を取ると、指を絡めて優しく撫でさする。
「指先から……気持ちが伝わってくるって……思ってたのは……。役じゃなくて、秋さんの気持ちだったんだね」
「蓮も……感じてたんだ……」
俺だけじゃなかったことが、震えるくらい嬉しい。
どちらからともなくまた唇を合わせて、深くお互いを味わった。
「……き……りがないから、食おっか」
「……そうだね」
なかなかやめられないキスを、中断するように終わらせた。
目を合わせては、二人ではにかみながらの食事。
胸の中がずっとくすぐったくて、どうしようもなく幸せだった。
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