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今日からはずっと一緒に✦side秋人✦5

「眠れないの?」  モゾモゾ動いていたから、蓮を起こしてしまったらしい。 「ごめん、起こしちゃったか……」 「ううん。俺も寝れなくって」  それを聞いてホッとした。 「お前明日早いんだから、寝ないとやべぇじゃん。あ、俺ソファで寝ようか? ……てか家帰ればいいのか……」  ブツブツ言っていたら、蓮は俺の頭を胸に押し付けるように抱き込んだ。 「俺、秋さんと一緒に住むくらいの気持ちだって言ったよね?」 「ん? うん」 「一緒に住んでるのにソファで寝るとか、帰るとか、ありえないでしょ」 「……そ……っか。俺、ここにいていいんだ……」 「当たり前。いてくれなきゃ困る」 「…………うん」    蓮は俺の頭にチュッとキスをした。 「ねえ秋さん、何か話して……」 「え、寝ろよ早く」 「全然眠れなくて。秋さんと話してると幸せになるから。ふわふわして眠れるかも」  言うことが可愛すぎて、本当にどうしたらいいんだ……。 「じゃあ、さ……。すげぇ、ウザいこと言ってもいい…………?」 「うん? ウザいこと? なに、言ってみて」 「もうさ。誰にも文句言わせないようにさ…………」 「……ん? 文句言わせないように?」  そこまで言って思いとどまった。  これ、ウザい通り越して重いだろ、と。   「…………や……っぱ、なんでもない」 「え、なになに、気になる」 「いい。ほんと……早すぎて自分で引いた……」 「早すぎる?」 「忘れてホント……ごめん」 「あ、じゃあ、俺が引かれるかもしれないウザいこと言ってもいい?」 「うん、なに?」 「俺さ。秋さんと付き合えるようになってから、もうずっと考えてたんだ。男同士でも結婚できる世の中にならないかなぁって」 「…………っ」 「もしできる日がきたら、すぐ結婚したいっ! ……とか、重くてウザいことずっと考えてた。……まだ、秋さんと付き合えたばっかりなのに。浮かれすぎだよね」  もうたまらなくなって、思わずぎゅっと蓮に抱きついた。 「蓮……もう本当に、大好きすぎる……」 「え? ウザくなかった? 引かなかった?」 「……俺は…………誰にも文句言わせないように、結婚式挙げちゃいてぇな…………って。言いたかった」 「そっか! 結婚式! それいいねっ」  結婚式挙げるだけなら自由だもんね! と嬉しそうに声を弾ませる。   「……挙げちゃいてぇな、っていう、ただの願望だけどな…………。そんなことしたら、蓮……仕事できなくなっちゃうもんな」 「……秋さんも、ね」  どちらからともなく、手を合わせて指を絡ませた。   「堂々と……できる世の中になんねぇかな。同性でも結婚できる日……本当に来ねぇかな……。そしたらさ、俺らがバーンってでっかい結婚式挙げてさ。俺たちと同じような人たちの、勇気を出すきっかけになれたら……いいな……」 「……それ、本当に実現したいね」 「…………ん」  なんだか話してるだけで幸せになった。  蓮と同じ気持ちだったことがすごく嬉しくて、胸の奥がジンとした。   「でもさ、秋さん……」 「うん?」 「もし……そういう世の中がこなくてもさ……。ずっと、ずっと先でもいいから……結婚式したいな……。二人でだけでも……」  蓮の言葉に、一瞬息が止まった。  涙が込み上げてきて、喉の奥が焼けるように熱くなる。 「…………うん。……いつか……絶対、結婚式挙げよ……」  蓮は、ぎゅっと強く俺を抱きしめて嬉しそうに言った。   「絶対ね、約束」 「……うん。絶対な」    ずっとずっと先だとしても。  そのずっと先の約束が、死ぬほど嬉しい……。  もう本当にずっと一緒にいるというその約束が、何よりも嬉しかった……。

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