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ドッキリ✦side蓮✦4

 秋さんは大粒の涙を流しながら、まるで睨むように加藤さんを見た。  あ、秋さん待って!   「蓮とは親友じゃなくてニコイチですっ! 親友よりももっと上の――――」   「秋さん待って……っ」   「大親友だからっっ!」  ……あ……、え……?   「蓮とはこの先もずっと大親友だからっ! お互い結婚して子供ができても、家族ぐるみでずぅーーっと付き合っていく、そういうニコイチだからっ! だから加藤さん、蓮を取らないでください…………っ!」  そう言い切ると、またゔぅーっと泣く秋さん。  あ……ドッキリだって、ちゃんと気づいてた……?  加藤さんと目を合わせて二人でホッと息を吐いた。  結婚して子供ができる……秋さんがどんな思いでそれを言ったのかを考えると、胸がツキンと痛い。  いつまでもボロボロと泣き続ける秋さんに、俺の涙も止まらないし早く終わらせたい。もうヤケになった。 「俺も……俺も秋さんとニコイチやめたくない……っ!」  俺までも「ゔぅーっ」と泣きだして、加藤さんが「えっ、えええ……?」とドン引きしたところで、カメラとスタッフがやっと個室の中に入ってきた。  やっと……やっと終わった……。  安堵で涙の量がまた増えた。 「ド、ドッキリ大成功ーー……ってこれ、大成功なのかな?」  仕掛け人の加藤さんがカメラに向かって首を傾げながら言った。 「…………なにこれ……」  グスグスと泣きながら、カメラを見つめて秋さんがつぶやく。  たぶんもう分かっていたはずだから、ドッキリだったと驚く演技が必要だ。  秋さんは、あらためて加藤さんにドッキリだと伝えられて、「じゃあ……蓮とニコイチやめなくていいの……? よ……よがっだーっ」と号泣した。 「秋さん、ごめんなさい……っ」  俺も泣きすぎてぐちゃぐちゃの顔を、カメラに完全に撮られてしまった。もう開き直るしかない。 「れんの……ばかやろぉ…………っ」  腕で顔を隠しながら、しゃくりあげて泣く秋さん。この泣き方は演技じゃない。秋さんが本気で泣いている。  もう早く帰って抱きしめたい。本当にごめんね秋さん……。  撮影終了後にプロデューサーの元へ行き、仕掛け人なのに泣いてしまったことを謝ると、「撮れ高最高だよ!」と肩を叩かれた。どうやらお蔵入りにはならないらしい。なってほしかった……。  でも俺たちの関係がバレた雰囲気はなさそうで安心した。加藤さんのおかげだ。もう本当に感謝しかない。 「加藤さん……あの……」 「お疲れさん。本当にしんどいドッキリだったね」 「あの……ありがとうございましたっ」  俺は深く腰を折って頭を下げた。  肩を叩かれて顔をあげると、耳元でささやかれる。 「お幸せに」 「…………っ」  その言葉にまた泣いてしまいそうになった。  加藤さんはスマホを指さして、何か文字を打ち始める。  すぐに俺のスマホが震えて、加藤さんからのメッセージが届く。 『久遠くん『親友』だけでドッキリって気づいたのすごいね。正直焦ったよ。とにかく乗り切れて良かった。それから二人、一緒にいるのがすごい自然で不思議すぎ。なんか応援したくなった。てか二人とも可愛すぎ』  顔を上げると優しく俺を見て微笑んでくれた。  合図を知らない加藤さんがドッキリに気づいた秋さんに驚いたことを、メッセージを読んで気づく。   「加藤さん……本当にありがとうございました!」  「良かったら今度三人で酒でも飲もうよ」 「はい……っぜひ!」  出演者のみすぐに解散になり、榊さんの車で二人一緒に送ってもらう。  車に乗り込むと、秋さんはすぐに俺の手を握ってきた。ふれていないと不安なのかもしれない。でも話しかけてもずっと無言で、ずっと俯いていた。  マンションに着くと、秋さんは名残惜しそうに手を離して車を降りた。  俺はすぐにでも抱きしめたくて玄関に入ったのに、秋さんは無言で部屋に上がる。 「秋さんごめんね、怒ってる……?」  秋さんは首を横にふって、ただ黙って俺の手を握る。  引っ張られるように中に入って、そのまま一緒にシャワーを浴びた。秋さんはずっと無言で、怒ってはいないようだけど表情が読み取れない。  シャワーを出ると、次は歯ブラシを口に突っ込まれた。無言の秋さんと並んで歯を磨く。  もうすっかり寝る準備も整って二人でベッドにもぐった。 「秋さん、あの……今日は本当に、ごめんね」  腕の中にすっぽりとおさまってる秋さんにあらためて謝ると、ぎゅうっと強く抱きついてきた秋さんの口がやっと開いた。 「……蓮……抱いて……。お願い……朝まで抱いてくれ……」 「え……っ、でも秋さん明日仕事……」  と言いかけて、秋さんが泣いてることにハッと気がついた。  

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