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続きのお正月〜キスマ編✦side秋人✦2
頭を撫でられる感覚にふと目が覚めた。
目を開けると蓮の優しい笑顔がそこにあって、嬉しくて思わず抱きついた。
「わっ」
「蓮、おかえり」
「うん、ただいま」
チュッとおかえりのキスをして微笑み合う。
「俺そんなに寝てた?」
「まだ十五時だよ。特になにもなかったから、終わって真っ直ぐ帰ってきた」
「わお。一緒の連休増えた気分っ。やったっ」
喜ぶ俺を見ながらクスクス笑う蓮を見ていて、そうだ新年のあいさつ! と思い至った。
「蓮、あけましておめでとう!」
すると蓮はきょとんとした顔をする。
「ん? どした?」
「……えっと。あけましておめでとう。今年も来年も再来年も、ずーっと、よろしくお願いします。俺の秋さん」
「えっ、なにそれやばっ。すげぇ幸せっ」
俺は身体を起こしてあらためて蓮に抱きついた。
「ずーっとよろしくなっ、俺の蓮っ」
「……ふふ、うん」
蓮は俺を抱きしめてずっとクスクス笑ってる。
テレビで笑いすぎてテンション上がってるのかな?
「お正月だから、なんかいろいろご馳走買ってきたよ。おせちは無理だったけど」
「え、マジ? やった!」
今日は食卓テーブルをやめて、ソファの前にご馳走を並べた。テレビでお正月特番を流して、二人でソファでゆっくりしよう。
ビールで乾杯をしながら「俺まだ二日酔いなんだよな」と言うと蓮が吹き出して笑った。
「お前、今日笑いのツボ浅すぎねぇ?」
「ふふ、うん。そうかも」
なんか本当にずっと笑ってて、楽しそうで俺もつられてしまう。
「あ……なぁ蓮、あのさ」
「うん?」
「これ、さ……」
ドキドキしながらキスマが見えるように首元をちょっと下げると、蓮がパッと顔を赤くした。
「あ……えっと、あの……ごめん、怒ってる……?」
うわ、うわっ。やっぱりこっそり付けた?
やばい。嬉しすぎて俺も顔が熱くなってきた。
「怒るわけねぇじゃんっ! すっげぇ嬉しかった。めちゃくちゃ嬉しかった。俺もずっと付けてほしかったから。ほんと夢かと思った。……蓮、ありがとな」
蓮がホッとしたように息をついて「よかった」と破顔した。
「えっと……勝手に付けてごめんね?」
「謝んなってっ! おねだりするつもりだったから百倍くらい嬉しかった。蓮も同じこと考えてたんだなぁって、めっちゃ嬉しかった」
蓮の頭をワシャワシャっと撫でると、なぜか眉を下げて俺を見つめてくる。
「ん?」
不思議に思って首をかしげた。でも蓮はさらに眉を下げて、「秋さん、ぎゅってしていい?」と可愛いことを言ってくる。
「ふはっ。なんだよあらたまって。ん、ぎゅってして」
俺が両手を広げるとふわっと抱きしめられた。
本当に幸せすぎてやばい。
父さん母さんに「守られたいタイプだったんだな」と言われたときは正直ギクリとした。
蓮と一緒にいる俺は、まさにその通りだと思ったからだ。
こうやって甘やかされてるときが、本当に幸せなんだ。
「秋さん。いつも思ってるけどなかなか言えないこと、言ってもいい?」
「え、なんだよ、怖……。なんか嫌なことか?」
「え? あ、違う違う。そうじゃなくて……」
「なんだビビった。嫌なことじゃないならいいよ。なに? 言えよなんでも」
蓮は俺を抱きしめたままソファにもたれた。
「……これは、本当にいつも思ってることなんだけどね」
蓮が「本当に」を強調する。なんでだ?
よくわからないが、蓮が話し始めたので考えるのをやめた。
「秋さん、俺ね。本当は……おそろいの指輪つけたいんだ……」
「……え」
「いつも手つないで歩きたい……。本当は秋さんをみんなに自慢したい……。早く結婚式挙げたい……。本当にいつもそう思ってる」
俺と一緒だ……。
蓮も同じ気持ちなんだとわかって、嬉しくて胸が熱くなった。
「俺が……いつも思ってることと一緒でビビる……」
蓮の胸に顔を押しつけると、俺を包む腕にぎゅっと力が入った。
「一緒で嬉しい。……ねえ、秋さん。指輪、買おうか」
「……買ってもつけらんねぇじゃん……」
「首から下げるとかさ」
「……そんな贅沢して、週刊誌にすっぱ抜かれんの怖ぇ……」
どこで不審に思われるかなんて本当にわからない。ちょっと首からのぞくチェーンが毎日同じだとか、そういうの本当によく見てるんだファンの子たちは。
スクープで騒ぎになって、蓮との時間を奪われるかもしれない。それなら贅沢なんてしたくない。
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