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#2「何考えてるの」 ⑤
「人を怒らせて楽しいのかよ。出会った時からずっとそうだったけど…」
仮にも想いを寄せている相手に対してヘイトを稼ぐ意味が分からず、これ以上理不尽な仕打ちは受けまいと考えた。
「だって、怒ってる時の泉くん、すごく、あっ、かっこいいんだもん…」
「…は?」
吐息が混ざった声で雨宮が答え続ける。
「怒って我を忘れてる時の泉くんは…、すごく怖いけど…男らしくて…獣みたいに僕の身体を貪るのが堪らなくって…、すっごい激しく攻めてくれるから…僕もう興奮しちゃって…」
「…そんなんでいちいち俺に嫌がらせしてたのか?」
「ごめんなさい…。でも、こんな風になっちゃったのは泉くんのせいだよ。お人好しで優しいだけの人だと思ってたのに、実際は凄く高圧的で、乱暴で、怒りっぽくて…、僕のことを本当に殺しそうな勢いなんだもん…。教室でキスした時…、泉くんに思い切りビンタされた時から…、ずーーーーーっと殺気立った泉くんに犯されたくて堪らない」
吐息がますます荒くなり、顔もみるみるうちに赤くなっていく。
「僕、泉くんになら犯されてもいい。レ●プされてもいい。性奴隷でもオナホでも、なんでも、なんでも良い…っ! 泉くん、もっと、もっとめちゃくちゃにして。掻き乱して。おかしくさせて」
こいつに出会ってから、俺の方がおかしくされちまったのかと思っていたが…。どうやら、雨宮も俺に翻弄されていたみたいだ。
「お前…やっぱとんだド変態だな」
「その変態のお尻にチンコ挿れて射精してるの一体誰…? 泉くんも十分変態だよ」
「こんな状況でも減らず口は叩くんだな…。マジでどうなっても知らねえからな」
雨宮に煽られて、更に動きが激しくなる。
「あっ、あっ、気持ちいい、気持ちいいよ泉くん」
すると、雨宮がいきなり俺の両手首を掴んだ。
「お願い泉くん、く、首、締めてくれない?」
「は!? お前、何言って…」
まさかの発言に驚きを隠せない。まさか首絞めを要求してくるとは…。
「お願い、ちょっとだけ…」
雨宮が俺の手を自らの首にあてがう。こんな事できるわけがない。出来る出来ないと言うより、そもそもしてはいけない事だと感じた。
俺はついこの間、雨宮の事を殴って怪我を負わせたばかりだ。雨宮が怒らないからと、乱雑に抱くような真似ばかりしているが、手を上げたり傷つけたりする事に抵抗が無くなってしまうのは何としても避けたかった。
「ねえお願い、やってみてよ。こうやって…」
雨宮が俺の手の上に手を添えて、ぐっと力を入れてきた。
「バカ、やめろ!」
咄嗟に手を振り払った。
「なんで、大丈夫だって…。少しだけなら…」
「…雨宮、もうやめよう、こんな事は。乱暴されるのが良いとか犯されたいとか、首締めとか…。やっぱおかしい気がする、お前と俺の関係。相手に欲望をぶつけて発散させるだけの関係で良いのか…? お前は本当にそれで満足なのか?」
雨宮が目を丸くした後、すぐに怪訝な顔をしてみせた。
「…何それ。良いって言ってんじゃん。僕はセックスが大好きで、泉くんも大好き。見た目も人間性も、もちろん性的な意味でも。泉くんとヤってる時が一番幸せだよ。泉くんはやっぱり僕のこと嫌い? もう僕と関わりたくない感じ…?」
「…いや、なんていうか…、まず暴力は常識的にダメな事なのは当然として、その…違和感というか。普通…セックスをする関係性って、互いに好き同士じゃないといけないというか…。ましてや俺たち、男同士だし。今となっては友達とも違うし、恋人同士でもないし、この妙な関係性がおかしいというか…」
「…泉くん、そんなこといちいち気にしてたの?」
「え?」
「常識的にとか男同士とか好き同士とか、友達とか恋人とかさ…そんなくだらないことにこだわる必要ないじゃん。僕はただセックスが好きで、好きな相手とできたら尚良いってだけ。泉くんは? どうなの?」
「えっと…」
「本当のこと言っちゃいなよ。泉くん、そこまで誠実な人間じゃないでしょ。本当は凄く欲深くて、欲求不満を晴らす為なら人に乱暴したって厭わない人間だって、認めたくないから関係性がどうのこうのとか悩むんだよ。僕は泉くんの獣じみた本性が好き。欲求を満たせるなら、僕の身体なんていくらでも使ってよ。ほら、どうしたい?僕の事を見て、泉くんはどうしたい?」
そう言って四つん這いになり、尻の穴を広げて見せて挑発する雨宮。赤く腫れた肛門から精液が漏れ、物欲しそうにヒクヒクとさせている。萎えた性器からは我慢汁が溢れ出しており、勃起こそしていないものの、性的欲求を晴らしたくて堪らないといった様子だ。
その姿を見ていると、さっきまでの自分の中の葛藤が嘘のように消え、居ても立っても居られなくなり、再度雨宮のアナルに挿入した。根元まで深く挿入し、勢いよくピストンする。身体と身体のぶつかり合う音が部屋に響きわたる。
「激し…っ、はあっ、はあっ、あっ、好き、好きだよ泉くん、大好き、あっ、あっ」
雨宮の性器を鷲掴み、力強く握る。カウパーに塗れた亀頭に指を沿わせ、尿道を指先で刺激する。
「あっ、ちんこ駄目え、すぐイっちゃう、あっ、ああっ」
精液を絞り出すように性器を力強くギュッと握り、下から上へと手を動かす。
「いたっ! あっ、つよすぎ、んっ…!」
痛がる雨宮の体勢を無理矢理仰向けに変えて、向かい合わせの状態で腰を振る。
「どうだ? こんな風に乱暴されるのが良いのかよ、お前。こんなんで本当にいいのか?」
「うんっ、もっと、もっとヤって」
雨宮の性器を扱きつつ、腰を振る。すると雨宮の性器から精液が勢いよく飛び出し、雨宮の腹部と顔面にかかった。それに応えるように俺も性器をアナルから抜き出し、雨宮の顔面に射精した。
雨宮は満足そうに笑みを浮かべ、顔についた精液を指で取り舐める。
「ね、ねえ、キスしよ」
顔中ベタベタのまま唇を重ね、精液塗れの舌を俺の口に入れてくる雨宮。
「はは、精液の味しかしないね」
頭が回らず、精液を口移しされても何も言う気になれなかった。
朦朧とした意識の中で、今日でようやく今までの胸に突っかかりが無くなっていく感覚を覚えた。本能を剥き出しにして相手に欲求をぶつける事を肯定され、もうこのままで良いかと思うほど、思考回路が麻痺しているのだろう。
只々雨宮に身を任せ、舌と舌を絡ませていた。
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