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#3「あのこと」 ②
遥ちゃんとの話が終わり、午後の授業も終わり、放課後になった。
スマホを見ると、一件の通知が届いていた。
『今から泉くんち向かうね』
遥ちゃんとの件が一段落して少し落ち着いたのも束の間、雨宮がうちに来るのを適当に了承したのを思い出し、一気に億劫になった。
遥ちゃんと雨宮の関係は、当然だが自然消滅していた。遥ちゃん曰く、やはりあのような状況を見た後だと、面と向かって話し合いをする勇気は出せなかったらしく、雨宮からの弁明すらも一切無かった為、連絡先も後に消去してしまったと聞いた。
遥ちゃんは、付き合っている相手が男と浮気しているところを目撃し、失恋と同時にひどく傷心した。なのにその当事者である俺は、未だに雨宮との関係を続けている。
遥ちゃんに謝罪をした後、すぐに雨宮と落ち合おうとしているこの状況に、俺の一貫性の無さ、不誠実さを痛感せずにはいられなかった。
帰宅してしばらくすると、雨宮が自宅に到着した。
「おじゃましまーす。泉くん、いろいろ持って来たよー」
部屋に上がるや否や、持っていた荷物を俺のベッドの上にぶちまけた。黒いベルトのようなものが数本。それと黒いアイマスク。
「これは…?」
「見た事ない? 拘束具」
「…こんなんどうするんだ?」
「決まってんじゃん。僕をこれで拘束してヤってほしいの。見てこれ首輪! 犬みたいに紐繋いでよ」
「…お前こんな趣味まであるのかよ…」
「拘束プレイなんて大して珍しくもないでしょ」
雨宮は立ち尽くす俺の前に立ち、顔を見上げると、少し背伸びをしてキスをした。
「…今日なんか怒ってる?」
「…え?」
「ずっと上の空だし冷たいし」
「…別に、お前に対して冷たいのはいつもの事だろ」
「ひどっ。なんで冷たくするの? まあ、そんなツンツンした泉くんが好きなんだけどさ。今日なんか怒ってそうだったから、結構乱暴に抱いてくれるんじゃないかって期待してたんだよね」
「…怒ってる人に対してそんな感情抱けるの、お前くらいだよ」
「ふふ…そうだね」
軽く笑いながら、俺の腰に両腕を回す雨宮。
「…ていうか今日、遥ちゃんと会ってたでしょ?」
「…えっ?」
「一階のロビーで。一緒にいるとこ見ちゃった。話しかけようとしたけど、泉くん怒ると思って。何話してたの?」
……? もしかしてこいつ、わざとすっとぼけてる?
「…何って、あのことについて謝りに行ってたんだよ。言われなくてもわかるだろ」
「あのことって、あのこと?」
「だからあのことだよ。何だよお前ふざけてんのか?」
「別にふざけてないけど。なんでそんなイライラしてるの? 早くヤリたいの?」
とぼけたふりをする雨宮に、思わず溜息が漏れる。
「…はあ…。お前さ、自分がどれだけ悪いことしたか自覚してんの?」
「うーん…。まあ、泉くんが遥ちゃんを好きなの知ってるのに、遥ちゃんを騙して付き合ったのは悪かったよ。ごめん泉くん」
「謝る相手俺じゃないだろ? お前本当に性格ヤバいの自覚してないんだな」
「ごめんってば、悪かったよ。随分前の話じゃん、もういいでしょ?」
…雨宮の態度に只々絶句するしか無かった。やはり、遥ちゃんに会わせなくて正解だったようだ。
「…まあ、お前には端から何も期待してないから。遥ちゃんには俺の方から謝っといたし、許すのも許さないのも遥ちゃん次第だ。お前はもう金輪際、遥ちゃんと関わるなよ。それがお前が唯一出来る償いだよ」
「言われなくとももう関わりません〜」
心底どうでもいいというような態度の雨宮。
突如、自分の服を脱ぎ始めた。
「そっかあ。泉くん、ずっと遥ちゃんのこと気にしてたんだね…」
裸になった雨宮が、拘束具が置いてあるベッドに上り込む。
「遥ちゃんのこと、まだ好き?」
アイマスクを両手で持ち、自分の顔の前に掲げて、こちらを見ながら尋ねてきた。
「…まだふざけてる?」
「だからぁ、ふざけてなんかないって。ねえまだ遥ちゃんのこと好きなの? 久々に話せてやっぱ嬉しかった?」
「…好きとか好きじゃないとか、そういうのじゃねえよ。本当に申し訳ないことしたと思ってるし、傷つけた相手にまだそんな想いを寄せてるなんて、失礼にもほどがあるだろ。今日で謝りたいことは謝ったし、俺はもう遥ちゃんとは何の関係も無いただの他人だよ」
話を聞いていた雨宮が小首をかしげる。
「何それ? 答えになってないし。別に過去に何かしちゃってもさ…、好きな子をまだ好きでいるのはおかしいことじゃなくない? …でも、そんなの僕が絶対に許さない」
ベッドの前に立っていた俺の手を雨宮がとっさに掴み、ベッドへ引きずり込んだ。
「泉くんは僕とだけ関わってれば良いからね。もう遥ちゃんのことは考えないで。僕だけ見てて。絶対だよ」
雨宮はそう言って、手に持っていたアイマスクを俺に差し出してきた。
◆
今俺のベッドの上に、目隠し・手足の拘束・そして首輪に紐をかけられた雨宮が横たわっている。
「何してるの泉くん…、早く犯してよ…」
なんて無防備な姿だ。こんなの、アダルトビデオで見たことあるか無いかだぞ。所謂、SMプレイだよな…。
「泉くんどうしたの? 早く、好きなようにヤッて良いよ。僕一切抵抗しないから」
雨宮は早くして欲しくて堪らないといった様子だ。しかし、そうは言われても何からすればいいのか…。とりあえず首に繋がった紐を手に持ち、引っ張り上げてみる。
ビクッ、と雨宮が反応する。まだ何もしていないのに、若干呼吸が乱れている。
「…お前これ、首苦しくないのか?」
「大丈夫、大丈夫だからあ、早く、早くヤッてよ」
そう言われても当然抵抗感がある。視界を塞がれ身動きの取れない状態で、何をしても良いと懇願する人間をいざ目の当たりにすると、好奇心よりも心配や不安の方が大きくなる。
はぁ、はぁ、と雨宮が口を半開きにしながら息を荒げている。俺はズボンのチャックを下ろし、恐る恐る性器を口元へ近づけると、何も見えてないはずの雨宮がしゃぶり始めた。だがやはり、横たわっているせいで上手く動けないのか、いつもより動作が鈍く感じる。もどかしくなった俺は、雨宮の頭を鷲掴みし、自ら腰を動かし始めた。
「ん、んぐっ、ぐふっ、ううっ」
苦しそうに喘ぐ雨宮。その声を聞きながら、喉の奥まで性器をねじ込む。
「んーーーーーっ、んっ、んぐぅっ」
言葉にならない声をあげる雨宮。口から性器を引き摺り出すと、雨宮は盛大に咽せ始めた。
「ゲホッ、ゲホッ、んっ、ンフッ…」
「…何でもして良いって言ったろ」
「うん、言った…。苦しかったけど、すっごい興奮した…。やっぱ泉くんってめちゃくちゃドSだよね?」
「お前がドMすぎるだけだ」
「ドSとドMで僕たちすごくお似合いだよね? お互い変態だし」
「お前と一緒にすんじゃねえよ」
仰向けの状態の雨宮の両脚を広げ、腰を浮かせて、アナルへ挿入した。ほぐしてない状態で若干入れづらいが、構わず動き始める。
「あっ、あっ、いたっ、痛い! 痛いっ!」
「痛くしてんだよ。こういうのが良いんだろ?」
雨宮の顔が徐々に赤く染まり、口からは涎が垂れている。
目隠しされた雨宮の顔を見ていると、ふと脳裏にあの光景が思い浮かんだ。
『あっ、あん、あ、あまみやくん、あっ』
雨宮は初めて出会った時よりも少し髪の毛が伸びており、それが元々女の子らしかった風貌に更に拍車を掛けていた。その様子が、あの時見た動画と酷似していた。
「…お前…」
腰の動きを止め、雨宮の髪の毛に手を伸ばした。
「…? 泉くん、どうかした…?」
「お前さ…、髪、切れよ」
「…え…? 髪? 何で今…? 髪がどうかした…?」
「いいから。今度切ってこい」
「…ああ、もしかして…」
雨宮の口角が少しだけ上がる。
「思い出しちゃった? 遥ちゃんのハメ撮り」
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