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#5「都合のいい二人」 ⑤

 微かなシャンプーの香りが鼻をくすぐる。雨宮が口の中に舌を這わせる。こんな風にじっくりとキスをするのは少し久しぶりな気がした。  最近は雨宮が誠意的に職探しをしてくれている為、その分二人の時間を設ける事が減っていたように感じていた。 「キスするの数日振りくらいだよね」  雨宮も同じ事を感じていたらしい。 「本当はキスもセックスも毎日したいくらいだけど、それだと浩樹くんが大変だよね、体力的に…」  雨宮がクスクスと笑う。 「…まあな…」 「…でも、今日はいいでしょ?」 「…お前がやりたいなら、いいけど」 「そうじゃなくて、浩樹くんがしたいかどうかを聞いてるんだけど」 「…えー、それは、その…」 「いつもそうやってはぐらかす…。毎回僕から誘ってばっかじゃん。たまには求められたいな、僕も」  少し不貞腐れたような表情で、雨宮はベッドに上がり、こちらを向いて寝転んだ。  Tシャツの裾が捲れ、白くて薄い腹がはだけている。寝転んだまま、こちらをじっと見つめて目を離さない。いつもの積極的な雨宮とは違い、今日はやたら扇情的だ。  雨宮の言う通り、確かに俺はいつも雨宮からの誘いを待つばかりで、自分から身体を求めたことは一度も無かった。自分から求める事への抵抗感というか、プライド的な何かが許さなかったのだろう。なのにいざヤるとなると、自分勝手に雨宮の身体を貪るから我ながらタチが悪い。  …こうやって雨宮が判断を委ねてきているのに、ついはぐらかして責任を持とうとしないのは俺の悪い癖かもしれない。  寝転ぶ雨宮の上に覆い被さるように、ベッドに上がり込んだ。雨宮は仰向けになったが、何も言わずにこちらをただじっと見つめている。  はだけたTシャツの隙間から、雨宮の身体を指でなぞる。乳首をそっと撫でてみると、雨宮が少し反応した。Tシャツを捲り上げ、色の薄い乳首に舌を這わせてみた。 「ん…っ」  雨宮が小さく声を上げる。その声に応えるように、舌の動きを少し加速させる。強く吸ってみたり、少し歯を立ててみたり。執拗に雨宮の乳首を攻め続けてみた。 「あ…っ、きもちい…っ」  雨宮の胸に軽くキスをした後、首筋、耳にキスをし、そのまま耳全体を舐め回す。 「あ…っ、ああっ、うう…っ」  感じている様子を見せる雨宮に、耳元でこう囁いた。 「…俺に何されたいか、言ってみろよ」  雨宮が俺の声に反応した。 「あ…えっと…、く…首元を、噛んでほしい…」 「…は?」  斜め上の返答に思わず困惑した。 「思いっきり噛んで良いよ。ほら、この辺」そう言ってTシャツの襟を掴んで下げる。 「痕がつくくらい、血が出るくらい強く噛んでみてほしい」  …先程自傷の話を聞いた後に思うのも何だが、やはりこいつは痛いのが好きらしい。とはいえ、どうして欲しいか聞いたのは俺の方だ。素直に従ってみることにした。  雨宮の白くて細い首筋に歯を立てる。噛みちぎるつもりで、歯に力を入れてみた。 「あああっ、いっ、いた…っ!」  首から口を離すと、歯型が赤く滲んでいた。血は出ていないものの、相当力を入れて歯を立てたので、それなりに痛いだろう。 「あーやば、噛まれるのハマっちゃうかも」  満足そうに噛み痕を手で抑えた雨宮。そしてTシャツを脱ぎ、ベッドの下へ放った。 「次はここ、触ってほしいな…」  起き上がってベッドの上に座り、下半身に手を当てた。雨宮の下着に手をかけ、性器を出して手で扱く。 「浩樹くんのも触ってあげる」  そう言って俺のモノも触り始めた。向かい合って座り、互いに手で扱き合う。 「ね、くっつけて一緒に触ろっか」  そう言って雨宮は身体を近づけ、互いの性器同士を合わせ、二本まとめて扱き始めた。 「浩樹くんも一緒にやって?」  自分のモノと雨宮のモノを二人で一緒に扱く。雨宮は腰を動かし、亀頭と亀頭を擦り合わせる。 「あっ、あんっ、あ…っ」 「くっ…、うっ…」  このまま続けているとイッてしまいそうだ…。そう感じた瞬間、咄嗟に身体が動き、雨宮を無理矢理押し倒した。 「うわっ!」  雨宮の下着をずり下ろして丸裸にさせ、両脚を無理矢理広げさせる。雨宮のアナルを見つめた後、舌で刺激してみた。 「ええっ!? ちょっと、えっ?」  困惑する雨宮をよそに舐め続ける。そして涎に塗れたアナルを指で刺激しながら、雨宮にキスをした。アナルを舐めた舌を口の中へ入れても、雨宮は抵抗する素振りすら見せずに受け入れている。  涎が糸を引くほど口の中を舐め回した後、雨宮の顔を見つめながら、ゆっくりとアナルに挿入した。 「ああっ、はあ…」  雨宮の呼吸が少しずつ乱れてくる。腰を動かすスピードを徐々に早めていくと同時に、雨宮の喘ぎ声も大きさを増していく。 「ああっ、あっ!」  大きな声が出たと同時に、雨宮が左腕を顔の前に持っていき、声を押し殺すように自らの腕を噛んだ。別の部屋に声が聞こえぬよう抑えているのだろう。 「ううっ、ふうう…っ」  本当は思い切り声を出して感じたいのだろうが、周りへの配慮を覚えたのか、声を精一杯押し殺している。 「こ、浩樹くん…っ」 「ほら、俺のことも噛んでいいぞ」  人から痛めつけられたい願望は無いものの、雨宮が感じている痛みを俺自身も体感したくなり、雨宮に覆い被さる形で首元を顔に近づけてみた。 「えっ…。で…でも…」 「いいから」  恐る恐る、雨宮が俺の首元に歯を立てる。が、力が弱く全く痛みを感じない。 「…全然弱いな」 「ええ…。だ、だって、されるのはいいけど自分からやるのはちょっと…」 「いいか、こうやるんだよ…!」  再度雨宮の首元に噛み付いた。先程とは別の場所に歯を強く立てる。 「ああっ! あっ、んんっ!」  噛んでいる最中も腰の動きは止めない。絶頂に近づくにつれ、噛む力を強くする。 「あああっ、痛い痛い痛い!! 痛いって、浩樹くん…っ!!」  本気で痛がる雨宮を敢えて無視し、射精するまで噛み続けた。 「はあ、はあっ、ううっ…」  雨宮の中に射精し終えてゆっくりと起き上がると、雨宮が少しだけ涙目になっている事に気が付いた。首の咬み傷、そして自傷跡。一見、暴力を受けた後のような悲惨さだ。見た瞬間、また雨宮相手に暴走し、無理矢理痛めつけてしまった自分の身勝手さを痛感した。 「…ごめん、やりすぎた」 「…ん、だいじょうぶ…。僕がしてって言ったんだし…」 「…そうだとしても、嫌だったら嫌って言って良いんだよ。腕の傷について触れられたのだって、内心複雑じゃなかったか?」 「…ううん、そんな事ない。この傷だって、馬鹿な事したなって思ってるけど、浩樹くんが受け入れてくれたから嬉しいよ」  雨宮が首元の噛み跡にそっと触れた。 「この噛み跡も一生残らないかな? 浩樹くんに付けられた傷なら本望なんだけど」 「バカ、ダメに決まってるだろ。…綺麗な身体してるんだから、少しは大事にしろ」 「…別に、綺麗なんかじゃないもん。僕の身体なんて…」  雨宮の表情が少し曇った。何をそんなに自分を貶す必要があるのか。 「うるさいな。白くて線が細くて綺麗だよ、お前は」 「…え?」 「いちいち自分を卑下するな。お前は自分の細い身体を嫌ってるかもしれんけど、俺は結構気に入ってる」 「…え、ほんとに? 普段そんなこと言わないのにどうしたの?」 「別に、思ってても言ってなかっただけだよ」  雨宮がにやけながら抱きついてきた。よほど嬉しかったのだろうか。  雨宮の胴体に腕を回し、しばらくの間二人で抱き合っていた。

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