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#6「誠意?」 ③
九月三十日。長かった夏休みも今日が最終日だ。
今日から教科書販売の期間に突入する。大学が始まってからでも購入できるが、前もって準備を済ませる為、悠と一緒に大学へ向かうことにした。
「明日からでもよくない? 明日も販売業者いるでしょ確か」
「いや、今日で買いに行くぞ。だってお前、前期の教科書販売行かなかったとか言ってたじゃねえか。自分で探して全部揃えるのも面倒だろ。今回はちゃんと揃えるぞ」
「…あーいや、ごめん、あれ嘘。普通に買ってたよ」
「…は?」
「浩樹くんに教科書見せてもらおうと思ってテキトー言ってただけ」
…呆れて少しだけ溜息が漏れる。
「まあ、普通に考えておかしいよな。教科書買ってないのに授業受けられるわけないしな…」
◆
大学に到着し、それぞれ履修した授業で必要になる教科書を購入した。
「ちゃんと買えたか?」
「買えたー」
「なにか買い忘れてるものないか?」
「大丈夫だって。めっちゃお節介するじゃん。母親じゃないんだから」
時計を見る。時刻は午後一時前、昼時だ。
「なんか昼飯食いに行く?」
「あー、行きたい、けど、今から散髪予約してんだよね」
「あ、そうなんだ。じゃあ、先帰っとくな」
悠と別れ、自分だけ先に帰宅した。再度登録した履修について確認し、明日からの授業の準備をした。それからいつも通り適当に食事を済ませ、家事をしたり、動画などを見たりして暇を潰した。
時刻は午後五時。悠はまだ帰ってこない。男の散髪ってこんなに時間掛かるっけ?
午後六時前になったところで、ようやっと悠が帰ってきた。
「ただいまぁ」
「おかえり……えっ?」
目を疑った。そこには髪色が明るい金髪になった悠がいた。
「えっ? ええっ!?」
「えへへ、髪の毛染めてみた。どう?」
「金髪…? えええ?」
「変かな?」
「いや、変じゃ無いけど…」
ずっと黒髪だったやつがいきなり何の前触れもなく金髪になると、急激な変化に驚きを隠せない。
「え…何で急に?」
「んー、イメチェン? たまにはいいかなって」
急な変化に驚きはしたが、明るい金髪が白い肌によく似合っている。
「あー、いいと思う。なんか、大学生って感じで」
「それ褒めてるの?」
「えっと、に、似合ってる。よく似合ってるよ」
悠は少し照れ臭そうに笑った。
「トリートメントもしてもらったんだ。いいでしょ。すごいサラサラしてるから触ってみてもいいよ」
と言って、こちらに頭を向けてきた。髪の毛に指を通してみると、確かにとても指通りの良い髪の毛になっていた。染髪剤の匂いが微かにする。
「黒髪の方が良かった?」
「黒髪…でも良かったと思うけど、金髪も似合ってるし、良いと思うよ」
肌の白さと髪の明るさによって際立つ黒い瞳に、思わず吸い込まれそうになる。
透明感のある見た目に、ついつい目を奪われる。
「…うん、良い。すごい、綺麗だよ」
そう言いながら髪を触っていた手を頰に添えると、悠の顔が少し赤くなった。顔をじっと見つめたまま背伸びをして口づけをした。
「ねえ、セックスしない?」
「えっ…」
「明日朝から授業だし、軽めで良いから」
「あー……」
「だめ?」
「…」
悠からの誘いを了承し、一緒にシャワーを浴び、ベッドに潜り込んだ。
悠が上に乗り、口づけをしてくる。微かに残る染髪剤の匂いが鼻をくすぐる。金髪が蛍光灯の灯りに照らされ、光を放っているように見えた。
俺の下半身の方に移動した悠がフェラをし始めた。上下に頭を動かすたびに金髪がサラサラと揺れる。綺麗な髪の毛に見とれるが、その綺麗な髪の持ち主に性器を咥えさせている事に少しだけ罪悪感を覚えた。もう慣れたはずと思っていたのだが…。
悠の頭に手をやり、髪を撫でた。すると悠は上目遣いでこちらを伺った。先端に軽くキスをした後、そのまま後ろへ寝転んだ。悠の脚を広げ、アナルへ挿入した。
「ん…っ」
小さく声を漏らす悠。徐々に腰の動きを早くしていく。
「ん、んっ、あっ、ああっ」
軋むベッドの音と悠の喘ぎ声。赤らんだ顔、揺れる金髪。いつもしているこの行為が、見慣れない金髪姿の効果で新鮮に感じる。
不意に向けられる扇情的な目線に煽られる。吐息が漏れる唇の色が、白い肌と明るい髪色によって際立って見える。
自分が予想以上に悠の金髪に魅了されていることに気が付いた。ついつい触りたくなる綺麗な髪の毛だ。
…ふと、以前までヤっている最中、たまに悠の髪の毛を鷲掴みしていた時のことを思い出し、また罪悪感が湧き上がった。
乱暴にしてくれと悠の方からいつも要求してくるが、そう言われたからといって、抵抗なくそれに応える俺の残虐性には思わず目を背けたくなる。
口づけをやめ、悠の顔を見つめる。半目でとろけたような顔になっている。やはりとても綺麗な顔をしている、と改めて認識した。
「悠、お前すごい、綺麗だな」
「えっ?」
急に話しかけられ、戸惑う悠。
「浩樹くん、な、なんて言ったの?」
「……」
聞き返されて少し照れを感じ、悠に覆いかぶさるように頭を下げ、腰を振る。
「あっ、あっ、あんっ、ああっ」
耳元で悠の喘ぎ声を聞きながら絶頂を迎えた。
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