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見知らぬ世界の住人 2
レオと名乗った少年は、ラフな白いシャツにすらっとした薄茶色のズボンを穿いていて、その腰回りにウエストポーチをつけていた。
首から足首まであるマントが風に吹かれて踊るように揺らめく。
レオは若草色の瞳を瞬かせ、ワインレッドの癖っ気のある髪をふわふわと跳ねさせながら、ニコリと微笑むと気さくに握手を求めてきた。
俺は恐る恐るその手を取って握り返してから自己紹介をする。
「えっと……大翔荒玖です」
「ヤマトスザク……素敵な名前だね。そっちの子は?」
「あ……柊……渚です……」
渚はチラチラとレオを見ながら途切れ途切れに名前を口にする。
「スザクとナギサだね。それで君たちは異世界人かな?」
「異世界人?」
俺は、その聞きなれない単語をオウム返しした。
やっぱりよく分からない世界に飛ばされたらしい。
だが、レオの声はそんなにびっくりした感じではなかった。
まるで、これまでにも俺たちのような人と出会ってきたかのような口ぶりで……。
「異世界人って意味はよく分からないが、ここは死後の世界ってわけじゃないんだな?」
「あはは、そうだね。ここは死後の世界ではないよ。君たちがどこから来たかは知らないけれど、ここはフィーネと呼ばれる実在する場所だよ」
フィーネ……聞いたことのない名前だった。
海外の都市などの名前を漏らさず覚えているわけじゃないので、もしかすると実際はあるのかもしれないけれど。
「まぁ、それはいいや。とりあえず、ガイドセンターまで連れて行ってあげるよ」
レオは俺たちに手招きすると、馬のような動物の上を指差す。
「こいつの上にこの足場を使って乗って」
「え? これに乗るんですか?」
渚が巨大な動物を上目遣いで見つめながら、レオに問いかける。
「これじゃないよ。こいつにもちゃんと名前があって、リーアっていうんだ。メスだよ」
「そのガイドセンターってのは歩いていけないのか?」
渚は乗るのに抵抗がある感じに見えて、俺は一応、念の為にレオに聞いてみる。
「流石にここから歩いてガイドセンターに行くのは遠すぎる。怖いとは思うけど、我慢して乗ってもらえると助かるかな」
レオは特に不快そうな顔をするでもなく、楽しそうにそう返事を返してきた。
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