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中心都市 カストレア

 差し出されたものは名刺だった。  紙には顔写真の他に役職などが記載されていてそれを脳内で読み上げる。  フィーネ案内係・兼 ガイドセンター副長  レオナルク=イズヴェルト 〔レオ〕  俺はレオの顔と名刺を交互に見た。  紙に印刷されている写真の人物その人のようで、一瞬固まる。 「レオってガイドセンターの人なのか……?」 「うん。一応、副長をしてるよ」 「……一つ気になっていたんだが、そのガイドセンターってなんなんだよ」 信用するにはどうにもまだ不安で、俺は無表情でレオを見つめながら、渚を抱きしめる腕に力を込める。 「ガイドセンターは君たちのような異世界人をサポートする場所だよ。俺がここに来たのはセンター長に迎えに行くように頼まれたからなんだ。だから君たちをどうこうしたいってわけじゃない。言葉じゃ伝わらないかもしれないけど、信じてほしい」  そう言って真剣な瞳で俺を見つめるレオに、気まずくなって視線を逸らした。 「……わかった。今はレオを信じる。さっきのも、ちょっとキツく言い過ぎた。悪い……」  嫉妬もあったとはいえ、レオに対するあの態度はあまりよくなかったかもしれない、と少し反省する。 俺の謝罪にレオは気を害した様子もなくにこりと微笑んで「大丈夫」と返してくれた。 「さて、そろそろガイドセンターに着くよ」  レオのその言葉に俺は恐る恐るリーアの背中から下を覗き見る。  眼下にはいつの間にか街が広がっていた。  高い建物がちらほらあり、空海島とさして変わらないくらいの都会っぷりだ。 「ガイドセンターのあるここ、カストレアは、このフィーネの中では一番栄えている街だよ」  レオは自慢げにそう教えてくれる。  リーアは少しずつ速度を落としながら降下していき、街の中でも一際大きい建物の飛行場のような開けた場所に降り立つとその場にゆっくり座り込んだ。 「さぁ、ここがガイドセンターだよ。降りるときは気をつけて降りてね」  レオに促され、俺と渚は慎重にリーアの上から降りると、飛行場の向こう側の景色に視線を向けた。  先程までの草原とは打って変わってあちこちに高層ビルがあった。  その高層ビルを縫うように車道が設けられていて、タイヤのない車が浮いた状態で走っている。

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