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同じ異世界人の人間
二階に上がると、廊下の一番右端にある大きな扉の前に案内された。
「ごめん、手が塞がってるから、扉、代わりにノックしてくれると助かる」
レオからそう頼まれて部屋のドアを二回ノックすると、しばらくしてからドタバタと中からものすごい音がして、勢いよく扉が開いた。
「ご、ごめんっ、ちょっとうたた寝してた!」
中から先程レオと電話で話していた男が出てきて、扉の前にいた俺は男との距離の近さにすっと身を引く。
服装は紺色のスーツを身に纏っており、シワなどなくとてもしっかりした第一印象だった。
まぁ、先程見たときより髪があちこち跳ねまくっているのを除けばだが……。
身長は俺より数センチ高い百八十五、六くらいで、年齢的には二十代半ばといったところだろうか。
「トウリ、髪の毛跳ねてるよ」
「マジか。うわ、恥ずかし……。あ、えっとそれで、迷子の異世界人ってこの子達か?」
トウリと呼ばれた男性が大きく跳ねている髪を直しながら、チラリと翠色の瞳を俺と渚に向けてくる。
「うん、えっと名前はスザクとナギサ。どっちも男の子だよ」
「そりゃ見りゃわかる。女には見えねーだろ。つか、ここには女の異世界人は来たことねーからな。とにかく、中に入ってくれ」
俺と渚は中へと案内された。
中は会議室のような場所で、スタック式の長机があり椅子が左右に六席ずつ用意されている。
更に奥の窓際にもう一つデスクと立派そうな背もたれ付きの椅子が置かれていた。
レオはデスクに近い椅子の一つに座ると俺と渚を手招きして声をかけてきた。
「この向かいに座って」
そう促され俺たちはチラリと視線を交わしてから、レオの向かいの椅子に座る。
全員が席についたことを確認してから、トウリが背もたれ付きの椅子に腰掛けて宙を指先で軽く叩いた。
先ほどレオが出した時と同じような画面が現れて、それを操作してロック解除する。
そのままトウリが何かを入力すると俺と渚の前にも同じような画面が映し出された。
画面にはガイドセンターについてという文字が並んでいる。
「えっと、まずは俺の自己紹介から。名前は千草 冬季 。数字の千って漢字に草原の草。冬に李 で千草冬李だ」
「え? 漢字の名前……?」
俺は冬李の名前を聞いて、驚いて聞き返す。
レオの名前が漢字ではなかったので、この世界ではああいう名前が普通なのだと思ったが、漢字の名前もあるということだろうか?
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