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LPシステムと世界の仕組み 3

「つまり一度出したら区域内にいればずっと使えるってことだな?」 「そういうことになる」  面倒くさいシステムだが、この世界から元の世界に帰るまではどうしたって使う羽目になるのだろうし慣れるしかないのだろう。 「ギルド依頼にも秘境クリアの依頼があったりするぞ」 「ギルド?」  渚が首を傾げてリルの言った単語の一つを復唱した。 「あぁ、この世界ではこのギルドって場所でお金を稼ぐんだ。誰かからの依頼をこなして賃金を貰うというシステムだな」 「当たり前だけど、この世界にもお金の概念がちゃんとあるんだな」  渚が困ったように苦笑した。  あっちの世界でも渚は生活をするために島からの支援を受けている身だから、お金という単語になにか思うことがあるのだろうか。 「ギルドでは雑用が大体だな。荷物運びや店の品入れの手伝い、貴族とかだと護衛としての任務とかな。危険区域や秘境関連だと区域内や秘境の中にあるレアものを取ってきてほしいとかがあるぞ」 「なるほど。そのギルドで依頼をこなして生活費を稼げってことか」 「あともう一つだけ、大事なことが――」  リルが何か言おうとした時に部屋の扉が勢いよく開かれ、顔を青ざめさせた女性が中に駆け込んできた。 「冬李くん、レオくん、大変! 危険区域内から魔物が出てきて街に向かってるって上から連絡が来たわ!」  入ってきたのは二十代半ばくらいの女性で、薄桃色の長い髪をポニーテールに結い、足首まである清楚な白のワンピースを身に纏っていた。  その上から薄紫のカーディガンを羽織り、耳に小型のワイヤレスイヤホンが装着されている。  カーディガンから覗くスラリとした細い手にはあっちの世界でもよく目にしていたタブレットを抱えていた。  浅紫色の瞳が緊張の色を帯びていて、何も知らない俺からしても相当な緊急事態だと言うことが伝わってくる。 「ティオ、どういうこと? 危険区域内から魔物が出るなんてないと思うんだけど。誤報じゃないかな?」  レオがなだめるように優しく話しかけるが、ティオは黙ったままタブレットを机に置くと画面が全員に見える位置に移動させた。  画面の中には山が映っていて、その山の入口らしき開けた道から狼のような動物が何十匹も出てきている映像が映し出されている。

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