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カストレアの危機
「なんで……」
レオが驚きを隠せないという表情で口元を手で隠した。
先ほど聞いた話だと、危険区域内の魔物は安全区域には出てこないという話だったはずだ。
棲み分けがされていて、それぞれが自分たちのテリトリーで生活しているのだろう。
しかし映像ではどうみても魔物がぞろぞろと出てきている。
「どうしよう、レオくん。この危険区域はカストレアに一番近い場所よ。魔物が向かっている方角的にもカストレア一直線!」
「ティオ、とりあえず落ち着こう。えっと、レオは、LPはどうなってるんだ?」
冬季は慌てるティオの肩に手を置いて宥めながらレオに向き直ると、少し硬い声でそう質問を投げかけた。
ティオは不安そうに冬季を上目遣いで見上げる。
「……その……ちょっと……キツイかも」
冬季からの質問にレオは暫く沈黙したあと、言いづらそうに返事を返した。
「……はぁー……マジか。ティオ、カストレアの緊急部隊はどうなってるんだ?」
「それが……今朝にルルド山で火災が発生したじゃない? そっちに駆り出されていてこっちに割ける人員がいないみたいなの……。魔物が危険区域内から出てくるなんて今までになかったし」
「たく、使えないなぁ……なんのための緊急部隊なんだよっ」
悪態をつく冬季を黙って見つめていた俺の袖がくいくいと遠慮がちに引っ張られて、そちらに視線を向けると渚が困った顔で俺のことを見ていた。
「……どうした?」
「その……助けてもらったし、俺たち、力になれないだろうか?」
渚の言葉にどう答えたらいいか分からず、首に手を当てて視線を逸らす。
確かに、俺たちなら力になれるかもしれない。
でも、人間相手と魔物じゃワケが違うし、もしも渚に何かあったらと思うと安易に頷くことが出来なかった。
「荒玖、頼む。ここまで助けてくれた人たちの力になりたいんだ」
あぁ、本当に嫌だ。
こういうときのこいつのこの瞳 に俺は弱いんだ。
頼み込んでるくせに芯の通った瞳は、どうせダメだと言っても聞きやしないのだから。
「ふぅ……仕方ないな。今回だけだぞ。おい、冬季」
俺は画面をいじっている冬季に声をかける。
緊迫した状況に、焦りの滲んだ翠の瞳が俺の姿を捉えて不安げに揺れた。
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