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乱れる心
冬季の言葉を聞きながら、しかし、頭の中はその意味を処理しきれなくて。
それなのに、心の中は酷くかき乱されてしまう。
「もちろん、渚や荒玖がどうしてもお互いに嫌だってんなら、俺が、責任取るつもりでいる。騙したのも頼んだのも俺だからな。ただ、レオだけはやめてほしい。あいつはその……俺の恋人だから」
「……そ、れは……お前がやるのもレオからしたら嫌だろ……」
頭で考えていることとは全く別のことにツッコミを入れる。
正直、今はそんなことはどうでもいいというのに。
「そうだろうな。でも、せめて俺にできることは協力してやりたい。レオもわかってくれるはず。それに荒玖は迷っているほど時間はないだろ」
「…………」
そう、俺のLPはすでに今、0になっている。
つまりは二十四時間後までに誰かと性交渉をしなければ完全にこの世界から消えてしまう。
「……荒玖……」
渚が不安そうな、けれど、どこか泣きそうな顔で俺を見つめてきた。
その表情にかき乱された心が更にぐちゃぐちゃになってしまう。
(なんで、そんな表情 するんだよ……。やめろよ……そんな表情 されたら……期待してしまう……。ダメだってわかってるのに……)
そう思っていても、気持ちは正直で。
「……少し……考える時間をくれ……」
俺は乱れる思考を立て直しながら、なんとかそんな無駄な言葉を絞り出した。
「うん、わかった。とにかく俺はガイドセンターにいるから、いつでも来てくれて構わない。表のロックも開けておく。後、ほんのお礼にしかならないけど、民宿も予約しておくから今日はそこで休んでくれていい」
俯く俺の頭に手を乗せて、わしゃわしゃと撫でる冬季の腕を振り払うことも出来ずに、俺はただぎゅっと自身の拳を爪跡ができる程に握りしめたのだった。
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