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期待と不安

 その後、俺たちはリーアに乗ってガイドセンターに戻った。  出迎えてくれたレオが温かいコーンスープを用意してくれていて、良かったらと勧められたのでありがたく頂くことにした。  スープはとても美味しく体の芯から温まったが、俺の心は激しく打ち寄せる波のように、ちっとも落ち着かなかった。  渚は始終なにか言いたげにチラチラとこちらを見ていたが、俺は視線を合わせることが出来ず俯いたままで。  目を合わせてしまったら心を見透かされそうで。  とんでもないことを口走りそうで。  まともに渚を見ることがでなかった。  スープを頂いてからお茶を貰い暫くゆっくりしたあと、冬季が予約してくれた民宿を教えてくれた。  無料で提供してくれるらしく、ついでに魔物から街を守ったということで、最初にお願いした通り、ギルド依頼扱いにもしてもらえて一先ずほっと胸を撫でおろす。  金額も大きいので、手渡しは難しいということで、明日またガイドセンターに来るようにと言われた……けれど。  俺に先があるのだろうか。  LPを回復することが出来なければ、先なんてなく、ただこの世界で消えるだけなのだから。  民宿に行く前に冬季が着替え用の部屋着を持ってきてくれて、その際に渚の風邪を伝えると、解熱剤を渡してくれた。  正直どうしようか悩んでいたところなのでこれは本当に助かった。 「服はちゃんと新品だから安心して使ってくれ。後、荒玖」  冬季がちょいちょいと手招きしてきたので不思議に思いながら近づくと、手のひらサイズのボトルを俺の手に握らせてきた。 「なんだこれ?」 「最初は、いきなり入れるのは痛すぎるだろうからってことでローションだよ。良かったら使ってくれていいぞ」 「ぶっ!! な、なな……っ」  俺はボトルを取り落としそうになって慌てて掴み直す。  そんな初心(ウブ)過ぎる行動に冬季がいたずらっぽく笑みを浮かべて、くくくと声を殺して笑われてしまった。 「……あ、りがたく……受け取っとく……。使うかわからないが……」  そのあまりの恥ずかしさに視線をそらしてから、服の間にボトルを押し込んだ。  こういうとき、経験があるやつには、どうしたって頭が上がらないのが少しだけ悔しい。 「上手く行くといいな。どうしてものときは俺のところに来てくれて構わないからな」  そんなふうに頼りになるのかならないのかわからない言葉を言ってのける冬季に、俺は頭を押えるのだった。

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