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期待と不安 4
「俺は……っ! 荒玖を助けたいんだ……っ」
「……っ」
その一言に掴んでいた細い腕を引き離せなくなった。
「罪悪感も、ある。でも、それよりも荒玖に消えて欲しくない……。荒玖が俺で安心できるなら、俺が荒玖を助けたいんだ……っ」
「…………」
もう、無理だ。
言い逃れも言い訳も出来ない。
そんなふうに言われたら、我慢なんて出来るわけがないじゃないか。
「……渚……お前、体を重ねるって、セックスするってどういう意味かわかってるんだよな……?」
「わ、かってる……いや、同性同士がとかは……よくわからないけど、意味はちゃんとわかってる……」
渚も覚悟して来ている、ということを確認して、俺は絡みついている腕にそっと触れた。
「とりあえず、離してくれ」
そう声をかけるとしがみついていた腕から力が抜けて、ようやくそろそろと俺の体から離れてくれた。
改めて渚の方に向き直り、見慣れた蒼い瞳をじっと見つめる。
視線が重なったことで互いの間に緊張感が走り、渚がごくりと息を呑んだ。
「……わかった。でも、ちょっと待ってくれ。俺まだ、風呂入ってない」
「…………へ?」
あまりにも予想外な返答だったのか、キョトンとした顔で渚が間の抜けた声を出す。
「流石に……風呂は入りたい」
「あ……あぁっ! そ、そうだよなっ! うん、えーと……あはは、ゆっくり浸かってきていいからいってらっしゃいっ!!」
今すぐすると考えていたのだろう、渚の顔がさっきよりも真っ赤に染まっていく。
……りんごかよ。無駄に可愛すぎる。
なんて場違いなことを思いつつも、俺も顔が赤いかもしれないなと呑気なことを頭の片隅で考えていた。
「ちょっと行ってくるから、渚は部屋の中で待っててくれ」
「あ……う、ん。わかった……。急がなくて……いいから、ゆっくりして、きて」
言葉を途切れ途切れに繋ぎながら頬を染める渚に、心臓の鼓動が早くなった。
やばい……めちゃくちゃ可愛い。
そんな表情 するのは……反則だろ……。
今すぐにでも押し倒したくなるじゃないか……。
その気持ちをなんとか残っている自制心で抑え込み、俺は部屋に設置されている洗面所に向かった。
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