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慰める
彼は背中を撫でられて呻いた。
ほら、効いてきた。
飲ませたお茶には違法なモノが入っている。
感覚を鋭敏にして、色んな境界を曖昧にしてしまうような。
今、張り詰めていた糸が切れたところで、優しく撫でられたりすれば、
その手を受け入れてしまっていたなら、その心地良さは単なる優しさではなくなる。
この手が肌を溶かすように、肌と肌との境目がとけるように彼は感じるはずだ。
他人の手を知らないのは分かってる。
両親からのスキンシップすらろくに与えられずに育っているだろう。
その飢えをクスリは増幅する。
撫でられるのは心地良すぎて、声が出る程だろう。
「どうした?気分でも悪いのか?」
優しく耳元で思いやりをこめてささやけば、出た声に恥ずかしくなったのか真っ赤になる。
これ。
これだ。
こういう反応がいい。
内心の舌なめずりを隠して、助け起こすふりをして抱き締める。
「大丈夫だ落ち着いて」
やさしくやさしく、耳に囁く。
感覚が鋭くなった耳にその声は身体に染みとおるだろう。
優しくされ慣れてないから心にまで届くだろう。
背中を撫でる手に肌が溶けそうだろう。
両親からのスキンシップすらまともになかった身体にそれは心地よく、何より薬がその感覚を倍増させる。
ああっ
ああっ
気待ち良さに呻いてしまって、また目を見開きさらに赤くなる。
「どうした?」
心配そうに髪をかきあげてやれば、隠されていた端正な顔が露になる。
線が細いのがいい。
好みの顔だ。
繊細で綺麗で、でも、地味で。
好みじゃなくてもペットにすることもあるが、好みの方がいい。
去年まで使ってた子は派手でキツイ顔だったが、まあ、あれはあれで、泣かしたり懇願させるギャップが楽しかったから良かった。
でも、好みな顔はやはりいい。
繊細な顎を指で楽しむ。
心配して撫でるふりをして。
薬の効いた身体はそれにすら感じる。
はうっ
また喘いでしまった彼は逃げようとする。
「すみません・・・先生、僕・・・」
モゴモゴいいながらオレの腕を振りほどき、立ち上がろうとして、オレに足を絡ませられ転ぶ。
「どうした?」
白々しく言いながら、転ぶのを抱きとめるふりをして、たまたまそこに手が当たったようにして身体をささえながらそこに触れる。
あうっ
ビクリと彼は背中を反らした。
もうすっかりガチガチになっていたソコにオレの手が触れたからだ。
このクスリを使えばどんな聖人でもフル勃起するから当然だ。
オレは驚いたふりをする。
そして気づかなかったふりもして、手をを離す。
彼は泣きそうになる。
優しくしてくれた先生の前で、初めて自分を助けてくれた大人の前で、何故かガチガチに勃起していたからだ。
しかもそれを知られた。
これはトラウマモノだ。
「違う違う違う!!!」
彼はパニックになって、泣き叫ぶ。
追い詰められて解放されて、トラウマ級の経験をして、もうボロボロなのだ。
「分かってる、分かってるよ・・・落ち着きなさい」
オレは優しく言って彼を宥めた。
暴れそうになる彼をしっかり抱きしめて。
彼はまたオレの胸の中で泣く。
細い身体を抱くのが楽しくなる。
これはいい。
こういうのがいい。
担ぎあげて、色々楽しめる。
「違うんです・・・。違うんです・・・」
力なくそうくりかえす彼に満足する。
「分かってる、分かってるよ、落ち着いて」
そう囁き宥めた。
でも背中を撫でる度に彼が感じているがかる。
混乱して怯えてて。
誰かにしがみつかずにはいられなくて、とうとうオレに彼はしがみつく。
もう手に入れたのも同然だった。
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