3 / 5

第3話

「誰からやる?」 「じゃあ、あたし―!」  リアが笑いながら言う。割と長めの袖をめくって縛ってからオレを見る。 「はだしの方が良いの?」 「うん。気分出るから」 「分かったー」  クスクス笑って、靴を脱いで、はだしで砂浜を踏んだリアは、サラサラで気持ちいいね、と笑う。  ルカに布を借りて、オレが軽く縛ってリアの目隠しをする。  ――――……リアって、綺麗だよなぁ。  ……細い腕と、目を隠した、顔半分。華奢で、ちょっとドキッとする。 「ね、ソラ、これで回るの?」 「あ、うん、そう。10回、回していい?」 「うん」  ドキドキを吹き飛ばして、リアをクルクル回らせながら数える。10を数えてから、手を離した。 「うわーうそ、全然方向、分かんないー」  きゃー、とリアが笑い出す。 「リア、全然違うって、後ろ後ろ」 「右だよ、リア」 「行き過ぎ、左左」 「全然分かんないよ、一人ずつ言ってよう!」  ゴウ、キース、ルカの声に、リアが笑いながら文句を言ってる。  めちゃくちゃ皆で、ぎゃあぎゃあ騒いだ結果、やっとのことでスイカの前にたどり着いたリアは、「そこでふりおろせ」というルカの声に応じて、力を込めて、棒を振り下ろした。  が。  カツン、みたいな変な音がしただけで、全然かけらもヒビも入らず。 「割れた?」  楽し気に言いながら目隠しを外したリアは、元気なスイカを見て、「えー? 当たったのにー」と、声を上げた。  皆、笑いながら、「力入れないと、このスイカ、割れねえな」と言ってる。 「なんか、盛り上がるな、これ」  ルカがクスクス笑ってオレを見る。 「でしょー? 大人気の行事だからねー」 「大人気なのか?」  クスクス笑うルカに、んー、と考えて、うん、多分、と笑う。  よく考えると、最後にやったのは、小学生だったかも。  大人になってからはやってないなあ。  もっとやればよかった。楽しい。 「じゃあ次、オレね」  キースが思ったよりノリノリで名乗り出た。  リアが持っていた布で、キースに目隠しをしている。  オレが回してやるよ、とゴウが言って、めちゃくちゃグルグルと、キースを回した。  回しすぎだよーと、リアが笑って、ルカも楽しそう。  ――――……なんか。この皆とだから、余計に楽しいのかもしれない。 「キース、こっちー」  スイカの真後ろから、オレが声を出すと、「こっち?」とキースが近づいてくる。 「そうそう、まっすぐーって、そっち右だよー」 「もっとひだりだ、キース」  オレとルカの声に合わせて良い感じで進んできたキース。 「もうちょっと下がってからがいいかも?」 「いや、下がりすぎだろ、あと少し、前」  リアとゴウにも言われて、「ここらへん?」と立ち止まった。 「いーよー」  オレはそう言って、皆も口々にオッケーを出した。  まっすぐ、振り下ろしたのだけれど。  踏み込み過ぎたのか、スイカを通りこした砂の上に、がつ、と打ち込んだ。 「あー。外れたな……」  言いながら、キースが目隠しを外して、自分が撃ち込んだ所を見てる。 「踏み込み過ぎたかな」  そう言ったキースに、ルカが笑う。 「ただ振り下ろせば当たったのにな」 「癖で、足が出たなあ……」  苦笑いのキース。 「次誰がやる?」 「ルカは? やんないの?」 「んー。……オレ多分、目隠ししても、何となく分かる」 「え、そうなの? 嘘でしょ?」  オレが咄嗟に答えた言葉に、ルカは、苦笑い。 「感覚的に、そこにあるっていうのが、多分、分かっちまうけど。やって良いか?」 「……絶対やだ」  特殊能力者めー。  なんなの、その能力。意味が分からん。

ともだちにシェアしよう!