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第十二章

第十二章  暗く冷たい石造りの天井から、水滴がぽた、ぽた、と一定間隔の速さで落ちてくる。  カイはその音を聞きながら、自分はずいぶんとこの匂いに縁があると思った。  ヴィンセントを拘束し、自らも若干の危うさを伴って歩いた身体は、あの時エリアスに抱きとめられた。  腰に腕を回した男は柔和な微笑みをこちらに向け、その後自分の宮殿へ帰る道すがら、カイをこの水の匂いが濃い地下牢に監禁したのだ。  エリアスは結局、カイに特別(・・)な何かを求めなかった。  あの男の企みも真意も、何もかもわからないままもうどのくらい月日が経ったのか。  こうして無為に過ごしていると、不意にこの日々が無意味に思えてならなかった。  けれどたとえ相手が退屈しのぎに自分を傷つけたいだけだったのだとして、それでもヴィンセントの安全を約束した言葉にカイは縋るしかい。  一度だけだが、下男の一人がミアの様子を話してくれたこともあり、それらの望みだけは叶えてくれていると信じたかった。 「おい、時間だぞ」  顔もあげないカイに牢を開けて入ってきた男が、気味悪そうに呟いた。  右足のアキレス腱を切られ、絶えず治りきらないようにと嵌められた鉄の輪の内側は、鋭い突起がぐるりと列をなし足に食い込む。  その、グズグズと黒い欠片が漂い、不意にボロっとこぼれ落ちて床を汚す瞬間を見てしまうと、下男たちはギョッと息を飲むのだ。 「何度見てもおっかねぇな……」  ちっ、と舌打ち紛れに本音を漏らした声を聞きながら、ずるりと這いずり上体を上げる。  長い前髪の隙間から窺えるこの男は、こんな様を見させられた挙句殺されるのだろうかとぼんやりと思った。  知りたくもないことを知ってしまったばかりに、消された下男はきっと数えきれない。  男に顎で指図され、カイは手枷の嵌められた両腕で、のろのろとズボンを下衣ごと寛げる。  エリアスはカイに特別(・・)な何かを求めはしなかったが、こうして定期的に体液を強制的に採取するようになった。  初めのうちは血液を抜かれるだけだった行為が、身体の再生が追いついていないことを知ると、こちらに移行したのだ。 「気味が悪いからこっちを見ないでくれよ」  吐き捨てるように言われ、無遠慮な手が自身を掴む。  勃起しないままの淫行は酷く苦痛だった。  いつまでも熱を追いやることができず、緩く体液を吐き出すそこは、ヴィンセントの面影を探すように震える。  後孔がじくじくと疼き、それを目の前で晒しているという事実がカイを責めたてた。 「なんだ、感じてるのか?」 「……っ、……」 「化け物も一丁前に性欲はあるんだな」  卑下た笑いも、すでに頭には入ってこない。  ただ、こんなにも縛られていた。  もう会うこともないだろうに、愚かしくカイはヴィンセントを想っている。 「お偉いさんが考えることは理解できないね。お前みたいなのを生かしておいて、どうするつもりなんだか」  言いながら立ち上がった男は、ガラス瓶に詰めた白濁をちら、と一瞥して顔を顰めた。  そのまま来た時と同じように足早に牢からでる。  未練なんてほんの一握りもないという背中を、カイはただ視線だけで見送った。  カイにだって、そんなことはわからない。  わからなかった。自分がなぜこうも生きて、生きて、生きてきたのか。  せめて寛げた衣服だけは戻したいのに、そこは未だじわじわと熱を帯びカイを苛立たせる。  ずるずると床に(くずお)れ、頬が触れた石畳の冷たさだけを感じて静かに目を閉じた。  そうして意識を失ってまた浮上する、そういった行為を何日か繰り返していると、水滴以外の音がない空間に、ぱたぱたと歩幅の小さな足音が近づいてきた。  カイは、誰だ、とも言われる前にその相手に気がつき、せめて少しでも安心させてやれるようにと上体を起こした。 「カイ……っ! カイ、カイ!」  啜り泣くミアが下男の制止を押し切りカイに抱きついた。  菫色の混じった髪から彼女の匂いがして、監禁されてから初めて見る顔に、カイは心配の声を漏らした。 「ミア……お前……大丈夫だったのか?」 「それは私の台詞ですよ……! どうしてこんなことに?」  ぎゅうっと胸にしがみつくミアの旋毛(つむじ)が、いつかのヴィンセントと重なって見える。  ミアに、想像以上の不安と恐ろしい思いを抱かせてしまったことが申し訳なかった。 「ミア、すまない……俺はここから当分出られないんだ。だからギルバートやヴィンセントに頼れ……決して、一人で何かを抱え込んだりするな。いいな?」 「カイ……あなたがそれを言うんですか?」 「ふ……憎まれ口を叩けるなら大丈夫だな」  柔く笑うと、カイの前髪にそっと触れた手が震えていた。  ミアもこの状況を理解していて、それでも懸命に心配をかけさせまいとしているのだ。  眉間に皺を寄せた顔をじっと見つめる。  この子は健やかに優しく育った。そう、オリビアに言ってやりたかった。 「ミア、お願いがあるんだ……聞いてくれるか?」 「なんですか? あなたのお願いなんて、初めて聞く気がします」 「……もう少し寄ってくれないか。額にキスがしたいんだ」  言葉の意味を、ミアは一瞬の戸惑いに押し込め小さく頷いた。  少しでも、気休めでもよかった。  魔法使いではないカイにはできないかもしれないが、けれどもし、少しでも自分に力が宿っているのなら、それをこの子に分け与えておきたかった。  ミアを守って欲しい。この力が。祈りが。 「さあ、もう行け。こんなところにいたら駄目だ」 「嫌です! カイ! あなたと一緒でなきゃ……っ」 「ミア、いい子だな。リリーを頼んだぞ」  そう言って下男を一瞥すると、男はびくりと肩を揺らし、焦った様子でこちらに近寄ってくる。  ミアは最後まで抵抗したが、カイは離れることを惜しむように伸ばされた手を、けれど握り返しはしなかった。  これからこの先、自分はミアに会えるかもわからない。  ただ、できれば彼女の人生が、自分が居ないものであっても幸せに包まれますようにと願った。  カイは彼女の後ろ姿が見えなくなっても、少しの間牢の鉄格子を睨むようにじっと遠くを見つめていた。  そうして気がつけばまた、小さく丸まった身体を横たえながら過ごし、時には下男が訪れ、そしてほとんど喉を通らない食事を取らされた。朝も昼もないこの場所は、時間の経過も自分の居場所すらも曖昧にしてしまう。  そうやって過ぎ去る日々の中で、時々、カイは夢なのか現実なのか定かではないものを見るようになった。  幼いミアがまっすぐにカイを見上げたあの日の姿。  ギルバートがヴィンセントを担いで現れた時の焦燥。  雪の結晶に儚く笑ったクロエと、ウィンターが見せてくれた美しい光の影。  そして、あの時酷く愛おしそうにカイを見下ろして抱き締めた腕の温もり。  カイはこれも何かの幻だろうか、と思いながら、目の前の赤い瞳を見上げた。 「寂しいの、小さな坊や」  予想に反して高く小さな声が落ちてくると、朦朧とした意識が少しずつ覚醒してきた。  いつの間に気を失ったのか、見間違えた相手(・・・・・・・)ではなく、気がつけば頭上に人の姿をしたリリーが佇んでいた。 「リリー……」 「逃げたい? 逃がしてあげようか?」 「おまえ……どうやってここに」  カイの言葉を無視して、そっと触れられた頬がひんやりとした。  暗闇の中で淡く発光するようにぼんやりと浮かびあがる白い髪が、ふわ、と彼女の肩から流れ落ちる。 「苦しそう、カイ。かわいそうに」 「リリー……ここに来たら駄目だ……お前の存在が知れたら、きっとエリアスが許さない」  あの男は、カイの味方になりうる全てを徹底的に排除したいはずだ。こうしてカイを手に入れた以上、それをこれからも実現するだろう。  ミアがここの出入りを許されたのは彼女に力がないことが明らかだからで、リリーがもし魔物として認識されてしまえば、排除しかねられない。 「聞いてくれ、リリー。助けたいんだ……お前はイタズラ好きで手を焼いたけれど、大事な猫だ……ミアを一人にしないでやってくれ」 「カイ、わかっているわ。貴方が何を望んでいるのか。でもあなた自身は気づいてない。気付かないふりをしているの?」  のらりくらりとはぐらかされ、焦りは募るばかりだった。  ぐ、と腕に力を込め肘で上体を支えると、リリーは膝をついた身体を屈め、カイを覗き込んでくる。  その瞳がまた、ヴィンセントと重なった。 「カイ、みんな大人になったのよ。あなたが思うほど柔くない……あなたが守らなければいけないものは、もうないのよ」 「……お前の言うことはいつもややこしいんだよ」 「あら、そんなことはないはずよ。ちゃんと聞く気になってみて」 「一人で何を話しているんだい」  唐突に割り込んだ声に、カイは驚きに肩を震わせた。勢いで振り返った先には、まさか、エリアスの姿が見える。  声もなく目を見開き、ハッとなって振り返れば、リリーの姿はすでに跡形もなく消えていた。 「なんだ、なにかにかどわかされたの?」 「……エリアス」  眉間に皺を寄せ必死にその男を睨むカイは、ぐっと奥歯を噛み締めた。  エリアスは今さらカイの不遜極まりない呼び方にも頓着せず、小さく首を傾げる。 「ふふ、君は僕の熱烈なアプローチに対していつも冷たいな。そんなに睨まなくてもいいのに」 「何しに来たんですか」  その問いに答えない男は、微笑みを崩さず牢の中にゆったりと入ってきた。  立ち上がれない姿を頭上から観察するように眺め、ふ、と息を吐く。  この男はいつだってそうだ。高みから、必死に藻掻く塵芥を見物している。 「まぁ、君の心はあの子のものだからね、僕に冷たいのは仕方ないか……でも、彼は今の君を見てどう思うだろう。あの子は君が、ウィンターを喰らったことを知ってるの?」  隠さない嫌味に、カイは射すくめる視線だけで答えた。  じゃら、と身体に巻きついた鎖が煩わしい。  今この瞬間に初めて、この力を人に向けて使ってしまいたい衝動に駆られた。 「ああ怖いな。軽口くらいいいじゃないか。僕は昔話をしに来ただけだよ」 「昔話?」 「そう。君の話ばかりじゃ不公平だろう? もうすぐこの生活も終わることだしね」  その曖昧な言い方が気にかかった。エリアスはそこに片膝をつき、何か面白いものを見るような目でカイを見つめる。  まるで観察して、いたぶる為のような視線。  自分の言葉がどれほどまで、カイを暗い闇に突き落とすのか理解しているのだ。 「カイ、じきにこの国は落ちるよ。ヴィンセントの部隊も全滅した」 「……は?」 「君はもう、ウィンターの話をする機会を永遠に失ったわけだ」  カイは咄嗟に何も言葉が出なかった。  エリアスの言っていることがわからない。この国が落ちる? ヴィンセントの部隊が全滅した?  頭が回らず、ただ反射的にエリアスを詰る。 「騙したのか!?」 「人聞きが悪いな。僕は止めたよ。でも彼はそれを振り切ったんだ。あの子は……ヴィンセントは君にどうあっても生きていて欲しいんだね」 「っふざけるな!!」 「ふざけてなんていないよ。あの子(・・・)が教えてくれたんだ……ああ、そうだカイ、僕のあの子は、【なんだ】と思う?」  不意に視界に入ってきたのは、牢の外に佇む黒装束の男だった。  カイは彼を知っていた。  いつだってエリアスのそばにひっそりと寄り添って、けれどカイとはただの一度もその視線を交じ合わせたことのない相手。  いつも何かに引っかかりを覚えていた。  覚えていたのに。 「…………ノア?」 「ふふ……僕にも情報網がいろいろあるって言ったろう。カイ、ノアを見てまだ何も思いだせない? 肌の色は? 瞳の強さは?」 「瞳?」  ――浅黒い肌に、黄金に近い瞳と、短く切りそろえられた黒曜石のような髪。  カイは唐突に、以前自分がそうノアを表現したことを思いだす。  その瞳を見て、不意に昔ウィンターが使役していたガルーという鳥が頭を過ぎった。絡み合う記憶で交差する二つの双眸。大きく強い榛色の翼と、冴え冴えと鋭い黄金の瞳。  見た目が派手だから悪事には使いづらいと、ウィンターはカイに漏らしていた。 「ノアは……使い魔なのか?」  小さく漏れた声に、エリアスの表情がぱっと明るくなった。  ぎゅっと胸の前で手のひらを握り、嬉しそうにカイへ語りかける。 「ああ、やっと気づいてくれた。初めて見た? アルテリアには、この子みたいな瞳の色や肌の色の人間も、魔女も魔法使いも、沢山いるよ。他国から色んなものを搾取し続けた国だ。異文化、異人種、異宗教。もちろん、使い魔も」 「……ノアは、アルテリアの使い魔なのか?」 「そうだよ、ノアは大国の諜報員だ。そして僕のそれでもある」  それではエリアスは、隣国のスパイを抱き込んだというのか。ある程度の情報を与え、自分が成し遂げたい何かのために、じわじわと国が殺されるのをこの男はただそばで見ていた。  見ていたんだ。過去、カイはただそうするしかでなかったのに。 「あんた……どういうつもりだ。何が目的なんだよ!」 「わ、びっくりした。そう急かさないでくれよ。昔話をしに来たって言ったろう?」 「っでまかせを」 「でまかせじゃないよ。まずはそうだな……僕の母君。彼女はね、君の心棒者だったんだよ」  そう言われて浮かんだのは、カイの隠遁生活の中にも流れてきたような大雑把な噂話だった。  奔放な第二王妃と対照的なエリアスの母は、真面目で身体が弱く、床に伏せがちだと耳にした。  それを優しく労るエリアスの態度が同情を引き、さらに人々の指示を集めることに繋がったのだとも。 「そう、君が思い浮かべているその人で多分合ってるよ。僕の母は君に心酔していてね。君というより、その力……言うなれば、ウィンターとクロエの愛にかな? 彼女は王に愛されなくて寂しかったんだ」  愛を貫いたウィンターと、雪の結晶を贈られたクロエ。  王の寵愛を受けられず、孤独な毎日を送る自分と同じ立場だったクロエが、自分が与えられることのない愛を手にした話。  エリアスの母はそれをどこかで知り、憧れたのだろう。  自分を守り、愛してくれる存在に。  けれどどこで、過去のそれらを知り得ることができたのか、なぜ今彼女の話をされるのか、その理由がわからず、カイは苛立ちを隠さなかった。  エリアスは膝に肘をついた体勢でカイを見下ろし、ゆっくりと微笑みかける。 「……あの人は、クロエの日記を見つけたんだよ、カイ」 「……日記?」 「そう、クロエの思い出だ。暗く閉ざされた毎日の中で、母にはそれがきっと救いだった。君の力がウィンターのものだって確証はなかったみたいだけれど、対の鍵の存在を知ってからは、躍起だった。力を得たところで、彼女を愛する人はいないのに」  そこで言葉を切ると、エリアスは思い出をなぞるように少しの間をあけた。  孤独に苛まれ、故郷にも帰れなかったその人は、じきに愛と力を混同したのだ。  エリアスがまた、静かに口を開く。 「……僕を、鍵にしたかったみたいでね。そうしたら君を殺して、息子の僕が力を得る。ないなら奪えばいいって安易な発想だろう? その為に薬や毒もたくさん飲まされたし、妙な呪い師にも会った。瞳の色を変える点眼も」  そう言うとエリアスは、驚愕のままただその話を聞いていたカイの髪を緩く掻きあげた。  そのまま頬を包み、なぜかまるで慈しむように親指で撫ぜる。  その一瞬に酷く戸惑った。  この男の、誰にも明かしたことのない柔い部分に、まさに今触れている気がして。 「こうして触れるには問題はないんだけれど、僕は右目が見えないんだ」 「え?」 「一国の王になる人間の、身体(しんたい)の欠損はそれだけで命取りだろう。生きてはいける。でも王になれなかったら、僕は何者にもなれない……君にも、あの子にもなれないんだから」  呟いた声はきっと男の本音だったのだろう。  ほとんど表情のない顔が、カイを正面から捉えた。  その瞳に囚われるように、カイの言葉は喉の奥で消えていく。 「それからは必死だった。死に物狂いで勉強したよ。魔術の本、錬金術、魔法、それっぽいこと全部やった。日常でこれがバレないように、ずっと気を抜けなかった」  カイは一度だけ、軟禁されていたころに尖塔の小さな窓から見た、世界の優しさを切り取ったような景色に、母息子がいたことを思い出す。  あの光景が実は、傍目にはわからないただの見せかけにすぎなかったなんて信じられなかった。  自分の手を引く母の姿は、この男にとって恐ろしいものでしかなかったのか。  カイを知って、同じ孤独を分け合える相手なのかと、身を震わせたのだろうか。 「……だけど、やっぱり選ばれたのは()だった。僕は右眼が見えないのに、ヴィンセントは全部持ってる。温かな家庭も、それなりの未来も、権力や自分の能力に左右されず、全部ね……どこの家庭だって色々あるだろう。自分だけが不幸じゃない。何も持ってないわけじゃない。知っているよ。けれど、彼はまた選ばれた……君の唯一に」  王族、傍系の貴族が集うパーティーや、庭園を歩く姿。それらで度々ヴィンセント家族を目にしていたエリアスは、その幸せそうな様子を何度も目に焼き付けたのだ。  そうして歪んでいった心は、じきにカイに向かった。  カイとヴィンセントの間にある絆が憎たらしくて、疎ましくて苦しくて欲しくて堪らなくて。  カイはそれを聞いて、今さら何を言えばいいのかわからなかった。  だとしたら本当にエリアスのしたことにはなんの意味もなかったのだ。  ただカイとヴィンセントの絆を壊したかった。愛を試したかった。国が滅びて、お互いが離れ離れになっても、それは永遠たりえるか。  もしくはどちらかが死んで、……死んでしまったとしても。 「……あいつは本当に死んだ?」  カイがぽつりと零した言葉に、エリアスは反応を示さなかった。  小さく口を開いた顔は、いつもと変わらずまるで能面のように見える。 「部隊が全滅ということは、そういうことだろうね」 「本当に? 本当にヴィンセントは死んだのか?」  尚もその返答に縋りつくカイへ、男は初めて苦笑を滲ませた。  震える指でエリアスの服を掴むその上から、そっと手のひらを重ね、ゆっくりと引き剥がす。  カイはどこかで、それが答えだとわかっていた。 「あの子が君の唯一になり得るなら、僕もなり得るかと思ったんだけど……どうやら違ったみたいだ」  そう言ったエリアスは、静かに立ち上がると牢を出ていった。  後ろに従えたノアが初めてカイをちら、と視界に捉え、それもすぐに消えてなくなった。

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