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妙な胸騒ぎ

「甘さ控えめに作ってみたんだ。試食してみて」 櫂さんがガトーショコラを運んできてくれた。 遡ること三十分前。 彼の先っぽが僕の体内に挿いってきた、まさにそのとき。タイミングを見計らったように櫂さんから電話が掛かってきた。 話しがあるんだ。詳しいことは来てから話す。すぐ来てくれないか?一方的にそれだけ言うと電話が切れた。ふたりきりの甘々なひとときはお預け。彼にお風呂に入れてもらい、急いで着替えをして帰る準備をした。車に乗ってから髪があちこち跳ねていることに気付きサイドミラーを見ながら手櫛で直したけどそう簡単には直らなかった。 「四季くんにはノンカフェインのカフェオレだよ。どうぞ」 「ありがとうございます」 ホイップクリームがガトーショコラに添えられていた。 フォークの先で一口分切って、早速口に運んだ。甘さ控えめというか、ちょっと苦いような。あまり食べたことないからよく分からないけど………気のせいかな? 「味、どうかな?」 「美味しいです」 丹精こめて作ってくれたんだもの。櫂さんをがっかりさせたら申し訳ないと思い、笑顔で答えた。 「そう、良かった」 カウンターに向かった櫂さんの目を盗み、ガトーショコラをハンカチで包みポケットにしまった。なぜそうしたか僕にも分からなかった。 「あれ、もう食べたの?おかわりあるよ」 櫂さんが飲み物を片手にすぐに戻ってきた。 「お腹いっぱいです。ありがとうございます」 「そう」 気付かれていない。良かった。ほっと胸を撫で下ろした。

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