7 / 431
妙な胸騒ぎ
「甘さ控えめに作ってみたんだ。試食してみて」
櫂さんがガトーショコラを運んできてくれた。
遡ること三十分前。
彼の先っぽが僕の体内に挿いってきた、まさにそのとき。タイミングを見計らったように櫂さんから電話が掛かってきた。
話しがあるんだ。詳しいことは来てから話す。すぐ来てくれないか?一方的にそれだけ言うと電話が切れた。ふたりきりの甘々なひとときはお預け。彼にお風呂に入れてもらい、急いで着替えをして帰る準備をした。車に乗ってから髪があちこち跳ねていることに気付きサイドミラーを見ながら手櫛で直したけどそう簡単には直らなかった。
「四季くんにはノンカフェインのカフェオレだよ。どうぞ」
「ありがとうございます」
ホイップクリームがガトーショコラに添えられていた。
フォークの先で一口分切って、早速口に運んだ。甘さ控えめというか、ちょっと苦いような。あまり食べたことないからよく分からないけど………気のせいかな?
「味、どうかな?」
「美味しいです」
丹精こめて作ってくれたんだもの。櫂さんをがっかりさせたら申し訳ないと思い、笑顔で答えた。
「そう、良かった」
カウンターに向かった櫂さんの目を盗み、ガトーショコラをハンカチで包みポケットにしまった。なぜそうしたか僕にも分からなかった。
「あれ、もう食べたの?おかわりあるよ」
櫂さんが飲み物を片手にすぐに戻ってきた。
「お腹いっぱいです。ありがとうございます」
「そう」
気付かれていない。良かった。ほっと胸を撫で下ろした。
ともだちにシェアしよう!