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三十年の事件
「和真さん、お爺ちゃんが呼んでるよ」
「ごめん、もう一度言ってくれ」
ぼんやりと、心ここにあらずという視線で子どもたちを寝かし付けていた彼。
まさかもう一人兄がいたなんて……。
動揺し、混乱していた。
「あ、そうだ。電話が鳴っていたんだっけ」のろのろと起き上がると枕元に置いてあったスマホに手を伸ばした。
「誰からだろう。知らない番号だ。四季、この番号に見覚えがある?」
彼がスマホを掲げて画面を見せてくれた。
「080ー、何回も電話を寄越してるね。もしかしたら結お姉さんじゃないかな?スマホを新しいのに交換するって話していたよ」
「なるほどね。もし掛かってきたら代わりに出てくれる?姉さんは俺じゃなく四季に用事があるんだと思うよ。お爺ちゃんと話しをしてくるから」
「うん、分かった。そこに置いてくれる?いま、下に下りるから」
「手伝うよ」
「大丈夫だよ、ひとりでも出来るから。お爺ちゃんを待たせると悪いから」
「遠慮するな」
結局彼に横に抱っこしてもらい布団の上に下ろしてもらった。
「なるべく急いで帰ってくるから寝ててもいいけど、寝ないで待っててもらえるとすごく嬉しいな」
「分かった。寝ないで待ってるから」
彼が子どものようににこにこと微笑んで、頭をぽんぽんと撫でてくれた。
彼が居間へ行ってすぐに電話が掛かってきた。
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