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三十年前の事件

ヤスさんの指示のもと、若い衆の皆さんが次から次に荷物を運び出し、玄関前に横付けされた2トントラックに積み込んでくれた。 「ガトーなんとかっていうケーキ、砂糖と塩を間違ったんじゃねぇか?チョコレートも間違ってブラックの苦いのを使ったのかもしれない。安心しろ、薬物とかそういう類いのは入っていなかった」 「やっぱり僕の味覚が変だったんだ。櫂さんを疑うなんてどうかしてる」 「間違いは誰にでもある。気にすんな」 ヤスさんが頭をぽんぽんと撫でてくれた。 「兄貴と四季さんお似合いです。親子というより、夫婦みたいで……イテッ。譲治てめぇーいきなり叩くことねぇだろう」 「勝、口を慎め。ヤス兄貴に半殺しにされるぞ」 失言に気付き真っ青になる若い衆。 「本音を言うと、四季が旦那に出会う前に会いたかった。そうすれば夫婦になれたかも知れない。和真さんもオヤジと一緒で焼きもち妬きの溺愛夫だ。一番敵に回したくないタイプの人間だ」 「ヤスさん、一服すっぺ」 お爺ちゃんが飲み物を持ってきてくれた。 「ヤスしゃん」 心春がペットボトルをヤスさんに両手でどうぞと差し出した。 「心春ありがとうな」 頭を撫でてもらい恥ずかしくて真っ赤になる心春。モジモジする仕草がなんとも愛らしい。

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