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三十年の事件
「四季、使って悪いが台所からお茶菓子を持ってきてくれないか?」
「はい」ハンドリウムをこいで台所に向かった。ふと立ち止まり、何気に振り返ると、ヤスさんが今まで一度も見たことがないくらい怖い表情でお爺ちゃんに詰め寄り何かを言っていた。
台所にいたお婆ちゃんからお茶菓子を受け取り戻ると、ヤスさんは庭で心春と追いかけっこして遊んでくれていた。良かった、いつもの優しいヤスさんに戻ってる。ほっとしたのも束の間。今度はお爺ちゃんが険しい表情でスマホの画面をじっと見つめていた。
「お爺ちゃん大丈夫?」
心配になり声を掛けると、
「な、何でもないよ」
慌ててスマホをズホンのポケットにしまった。
「四季……ごめん。やっぱり何でもない」
お爺ちゃんは何か言いたげそうだった。でも、
「達者でな」
短く答えると逃げるようにお婆ちゃんのところに行ってしまった。
「心春、おやつを食べたら出掛けようか?」
「うん!」向こうに着いたら一太くんたちと遊ぶ気まんまんでいる心春。ヤスさんに抱っこしてもらい縁側に座らせてもらうと足をぶらぶらさせながら、美味しそうにせんべいを頬張った。
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