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新しい生活のはじまり
頭を掻きながらミルクを飲む円花をじっと見つめる彼の視線に気付いた。
「頭が痒いのかな?」
「見た感じ湿疹はないから、掻くのが癖になってるのかも」
「そうか、それなら良かった。はじめての子育てだから戸惑うことのほうが多くて。頭が追い付かないんだ。両親の愛情と温もりを知らずに育ったから、ちゃんと子育てが出来ているのかいつも不安になる。本当に二人を引き取って良かったのかたまに分からなくなる。俺みたいのに家族を守れるのかって」
和真さんの手が震えていた。
「なるようにしかないよ。あれこれ考えてもしょうがないよ。心春が僕たちのことパパ、ママって呼んでくれる。円花に話し掛けるとにこにこと笑ってくれる。それだけでも十分幸せだよ」
彼を元気付けようと笑顔で返した。
「四季ごめんな。結果的には無関係なきみを巻き込むことになってしまった。後悔しても仕切れないよ」
「和真さんと出会って、結婚を決意した時から、何があっても和真さんの側にいる。ずっと和真さんだけを好きでいるって決めたんだよ。だから、謝らないで」
「まさかきみのほうから好きだって言ってもらえるとは思わなかったから嬉しいよ」
「へ?」
へこんで沈んでいた彼の表情がぱっと明るくなった。失言に気付いたときは後の祭りだった。
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